「ΛrlequiΩ PRESENTS 「friend&fiend」2025開催に向け暁の呼びかけで行われた全3回に渡る座談会。vistlip海、BugLug一聖を迎えての第1回、暁から出た言葉“会話がしたい”とは!?」
僕が仲のいいバンドマンたちはほんとにカッコいいやつしか残ってない
────なお、これは少し回答が難しい質問かもしれないとは思いつつ、敢えてうかがわせていただきます。これまでに呼ばれたイベントライヴにおいて、ぶっちゃけ「これは出なくてもよかったかな…」と思われた経験はそれぞれございますか。
暁:その話、俺も聞きたい!言える範囲で(笑)
海:全然そんなのありますよ。まぁ、もともとうちはそんなにイベントって出てなかったんですよね。でも、ここ数年くらいでイベント自体のかたちも意味合いもだんだん変わってきてるなと感じてきてるところがあって、それで出るようにはなったんですけど、やっぱりそれ以前の昔はね。某所で珍しく出てみたものの、結局「よくわかんなかったな」っていうのがありました(苦笑)
暁:それは何故そう感じたんですか?
海:それこそ「なんでこのバンドたちを集めたんですか」っていうところの理由が、単に“数字を持ってるから”っていうとこだけだったりすると、マジで意味がないなと思っちゃうからね。当然、主催者側からすると人をたくさん入れたいっていうのはわかるんですよ。でも、出る側からすると自分たちの音楽やバンドとしてのライヴをいかにそこにいる人たちに対して伝えられるかどうか?っていうところが一番大事だから、そこを全く見ないで数字だけ見てるイベントはほんとに意味ないなとしか思えない。逆に、中身はめちゃくちゃいいんだけど数字的なものを度外視しちゃってるようなイベントもあったりするから、そういうのは傍から見てて「もったいないな」って感じるパターンもあるけど。
暁:そこのバランスって難しいですよね。
海:“血が通ってない”とか、バンドの意志やメンバーの意思がちゃんと伝わってこないとか、イベントとしての筋が通ってないっていうのは、きっと観てる側にとっても“響かない”よね。じゃないと、単にいくつかのバンドがうちはうち、よそはよそで演奏してますっていうだけの話になっちゃう気がする。
▲海(vistlip)
暁:海さんの言う“血が通ってるかどうか”って、凄い大切やなって僕も思います。CDショップ主催でも、レーベル主催でも、バンド以外が発信するイベントはカタログ的にこんなバンドがいますっていうことをライトに楽しむものでも良かったと思うけど、それがなくなった今はバンド主体でやっていことになるわけで、そうなったらそこには深いものがちゃんとあるのが理想ですよね。
────そのあたり、一聖さんはこれまで数々のイベントに出演されてきた中で「これは出なくてもよかったかな…」と感じてしまわれた経験はございましたか?
一聖:俺はそういう感覚あんまりなくって、常に自分がどうするかっていうことを考えてやって来てますね。イベントごとにそれぞれ状況が違ったとしても、自分たちの立ち回り次第で見せ方も見え方も変わってくると思うんで、結局その時にその場でどんなライヴをすればいいのかをとにかく第一に考えます。
暁:そういうとこ、全然変わんないなぁ。昔ツーマンツアーを初めて廻った時にも、同じように「絶対、大事なのは自分がどうするか」って言ってたよね。
一聖:まさに、あの時にそれを初めて俺は把握出来たから。そこからはずっと変わってない。あれが2016年だったかな?
────2016年2月に開催された[Cure Presents「ノンフィクション]のことですね。これも今思えば雑誌主催のツーマンだったことになります。
暁:そうでしたね。俺らは[Stylish Wave]あたりもギリギリ経験出来てる世代やけど、当時は「知らん人らの前でやれる。ラッキー!」くらいの感じで、まだ今みたいな解像度ではイベントに対しての意識を持ってなかったんですよ。
海:というか、その頃はそれが普通だったんじゃない?SNSとサブスクが普及して、どのバンドも公式チャンネルを持つようになったことで、そのへんの価値観は大きく変わってきたと思うよ。だって、雑誌メインでみんなが情報を得てた時代は音を届ける方法って限られてたじゃない?
暁:そっか、だからイベントもカタログ的で全然良かったのか。
海:あとはオムニバス・アルバムなんていうのもけっこうあったし。
────その点、現代では気になるバンドがあれば検索すれば音と像にすぐたどり着けますし、調べずともタイムラインから関連情報としていろいろ流れてきたりしますものね。
海:しかも、それで気に入ったら別にイベントとか行かなくてもワンマンの方がボリュームもあるし、まずはそっちに行ってみようってなりますから。じゃあ、何故イベントをやるのか?そこでの意味とは?ってなったら、やっぱり“血が通ってない”のはちょっとね。
────思うに、今回の[ΛrlequiΩ PRESENTS 「friend&fiend」]については参加バンドの顔ぶれとその関係性から、きっと来てくださる方々は「自分もこのコミュニティの一員として参加したい」と感じられる方も多そうですよね。
暁:どうなんやろ?そこはまだよくわかんない。言い方は良くないかもですけど、まだ僕はイベントをやっていくうえでの“人の巻き込み方”を多分あんまり理解出来てなくて、今日のこの場もひとつの本番ではあるんやけど、同時に本番に向けた練習をさせてもらってるっていう意識もあって。恣意的に人を巻き込む力はあると思うんですけど、再現性のあるかたちで人を巻き込めるようにもなりたくて。そういう経験がまだ全然ないんですよ。
海:暁はそういうキャラじゃないしね。暁はΛrlequiΩの真ん中に立って、ひとりで渦巻いてる感じというか(笑)
暁:これまではそれで良かったんですよ。でも、今回のイベントに関しては自分なりに思うところもあって、今までと違うことをしたいというよりは自分から巻き込んでいくことに挑戦してみたいなって思ったんです。そういう周りの巻き込み方がヴィジュアル系の中でうまい人って、どういう人がいます?
海:逹瑯(MUCC)さん。あの人はダントツ。だけど、それ以外だとこの界隈ってそんなにコミュニケーション能力が高い人もなかなかいない気がする。
暁:そもそもがね。だから、自分でやれるようになりたいんですよ。
海:もはや若手っていうわけではないけど、昨日飯食いに行って話をした時に「あともうちょっとしたら、こいつは凄い巻き込む力を持つようになるかもな」って思ったのはRoyzの昴かな。
暁:あぁ、いいですね。なんか分かる気がする。
海:考える力もあるし、男気もあるし、物事を見る目もちゃんとあるし。まぁ、若干いわゆる思想が強めなタイプではあるんですけど(笑)。それだけに、僕とは延々しゃべってられるんですよ。2024年は年越しのイベントも主催したしね。ここから周りを巻き込んで渦を作っていこうとしてるんだな、っていう姿勢をかなり感じますよ。
暁:僕らもRoyzには年末に呼んでもらって、海さんほどの解像度では感じてなかったですけど、なんかやろうとしてるんだなっていうのはけっこう伝わってきましたね。
────頼もしい限りです。
海:ΛrlequiΩはさ。独自の渦も作れてるし、それに対して自然と周りのみんなも「これは渦だな」ってわかってるんだけど、暁とか奈緒はそれでも「ほんとにこれで大丈夫なんですかね?」って、つい疑問を感じちゃうタイプでしょ。
暁:あはは(笑)。多少そういうところはあります。
────そういえば。既に話は進んできておりますけれど、あらためてこの[ΛrlequiΩ PRESENTS 「friend&fiend」]というイベントタイトルについての解説といいますか、ここに込めた想いを暁さんから語っていただくことは出来ますでしょうか。
暁:friendはまんまの意味やけど、fiendっていうのは本来あんまり良い意味の言葉ではないんですよ。
海:直訳だと悪魔とか敵だっけ?そういう意味として受け取っていいわけ?
────スラングとしては狂信者、常習者といった意味で使うこともあるそうですけれど。
暁:なんていうか…バンドマンって、カッコいいヤツしか認めん!みたいなところがあるじゃないですか。それが一般的に見て正常なのか正常でないのかは別として、なにかしらお互いにリスペクト出来る部分があって初めて成り立つ関係性とか友情ってあると思うし、そこがなかったら自分の場合はまずバンドマンとは一緒にいられないんですね。それがなくなれば自然と遠のいていくこともあるんで、これはつまりrespectの”r”があればfriendになるし、なかったら…っていう意味での「friend&fiend」なんですよ。
────文字面としてみると言葉遊び的なキャッチーさも持ったタイトルですが、意味合いとしてはとても深いのですね。
暁:もちろん「シンプルに楽しくやりたい」のが一番大きいですけど、その前提としては自分の中の軸がまずあるし、しっかりこのイベントに臨んでくれるであろうバンドにしか声掛けしてません。ほんまに、自分たち自身がこのイベントをやることでドキドキしたいんですよ。ここはもともと自分が音楽を“楽しいから始めた”わけではなかったからこそ、っていうのもあるでしょうね。
────暁さんの音楽的初期衝動は…
暁:これが気に入らんとか、自分の思ってることを大声で言いたい!っていうところから始まってます。
海:SEX PISTOLSと一緒だ。
────反骨精神が基盤にあるわけですね。
暁:そういう意味では、ライヴでフロアに対して「楽しんでますか?」って言えないところから始まってるんです。ただ、そこは最近になってライヴを楽しむっていうのはよりその状況にのめり込むことなんやなっていう感覚もわかってきたんで、自分なりにライヴを楽しむっていうことの意味をかみ砕きながら、飲み込むことが出来るようになってきた気はしてます。シンプルにライヴをやることでドキドキしたい気持ちも強くなってて、それを経てどういう意味を感じたいとかでもなく、純粋にそこを追求したい感じですね。だから、このイベントも根底の部分ではあくまで自分のため、自分たちのためにやることではあるんですよ。ただし、結果的にこのイベントがみんなにとってもドキドキできるものになったら良いなと思ってるのは間違いないです。そこはちゃんと血を通わせた場として成立させたい、と思ってます。
一聖:めっっっちゃわかる。俺も[バグサミ]の主旨ってそういうとこだと思ってて、おんなじジャンルでバンドやってきてる仲間たちに対して、別に敵対心なんて1回も持ったことないのね。みんな友だち、みんなチームみたいなもんだと思ってる。そのくらい、今は協調性が必要な時代になって来てるから。でも、現実には逆に個別化してるところがあるでしょ。ファンの方も、特定の推しとかバンドのためだけに通うケースが増えてる感じがするしね。せっかくヴィジュアル系が好きなんだったら、それの集合体イベントってもっとみんな楽しめるんじゃない?っていう気持ちでやってるのが[バグサミ]なんです。
海:なるほどね、暁と一聖の言ってることはよくわかる。でも、俺は性格がひん曲がってるせいかまたちょっとだけ違うことも感じてたりしますよ。
────といいますと?
海:自分は先輩も後輩もわりと友だちも多い方だとは思うんですよ。
暁:ですよね。みんなにとっての駆け込み寺みたいなイメージあります。
海:暁もなー、いっときわけわかんない時間に「今ちょっといいっすか」って電話かかってきて2時間くらい話したこと何回かあったもんな。あとは突然「明日、ちょっと会う時間作ってもらうこと出来ますか」っていう電話が来たこともあったし(笑)。いや、俺はそういうの全然いいんすけどね。っていうのは、さっき暁が言ってたのと一緒で自分の友だちはみんな何かしらリスペクト出来るところのあるヤツばっかだから。しかも、コロナがさらにふるいをかけたんですよ。つまり、僕が仲のいいバンドマンたちはほんとにカッコいいやつしか残ってないってことなわけです。
────とても良いことのように聴こえるのですが、いましがたの「俺は性格がひん曲がってるせいかまたちょっと違うことも感じてたりしますよ」とは要するにどういうことなのです??
海:そういうカッコいいやつらのことを推してるっていうファンの子たちに対しては、あくまでも“2番目の存在になりたい”だけっていうことです。イベントで他のバンドのファンを獲ってやろう、なんていう気は全くないんですよ。一番好きなものは一生そのまま一番好きでいて欲しい。じゃないと、友だちのバンドがなくなっちゃうのもイヤだし。暁がたまに話を聞いてもらってる先輩のバンドか、じゃあ観てやるか!で全然イイ。一聖のファンの子が「一聖と仲良いんだか、悪いんだかよくわかんないギタリストのいるバンドでしょ?まぁ、今週ヒマだし観てやるか」で全然大丈夫(笑)。そのかわり、うちのファンに対しても「あいつらの大事なワンマンは行って来いよ!」って思うしね。
────なんとも寛容で素敵な考え方です。
海:どうかなぁ?こういう2番手を狙うひん曲がった考え方は、若干性格悪いのかなと自覚はしてるんですが(笑)。これは俺がギターなせいもあるとは思いますよ。俺、ヴォーカルじゃねーし!って。ヴォーカルはやっぱ1番じゃないと。ヴォーカリストにはどこでも何時でもオンリーワンかつナンバーワンでいて欲しい、っていうのはある。
暁:あぁ、それは確かにあるかもしれないなぁ。