【武瑠、Verde/、mitsu】4月4日下北沢シャングリラで開催される「咆哮SOLOIST」へ向けて一匹狼が集結!ソロだからこそ生まれるドラマの産声。
これ、ヴィジュアル系がやらなきゃいけなかったことなんじゃないの?
────それぞれの印象も伺っていきたいと思います。まずは武瑠さんから。
mitsu:道なき道を行く人なんだなと思ってますね。武瑠くん自身がどう思ってるかは一回置いといて、他のものにはなりたくない人なんだなって思ってて、そこに勇気を感じます。他の道もいっぱい知ってるのに、自分が歩く新しい道を進まずにはいられない人。単純にカッコいいなと思います。武瑠くん自身の歩き方や生き様がストーリーになってますよね。孤高の道を行く人だから勝手にたまに心配になっちゃいますけど(笑)。でもその儚さが魅力的じゃないですか。生き様に魅力ない人の歌なんか誰も聴きたくないんで。
Shou:マーケティングしない美学を感じますね。あと、やっぱり前の事務所でMIYAVIさんやthe GazettEが一緒だったから“ダセぇことはやんねぇ”ってスタイルを継承しているなと思います。パブリックイメージとは違う強さみたいものを一番感じるのが武瑠ですね。
────それはソロになってから感じますか?
Shou:いや、SuGの時から感じてました。バンド全体を背負っているヴォーカルだし、アートワーク、メッセージ性と歌以外にもバンドに付帯する全てを背負っていながら、それだけで飽き足らずに探究していくのが彼だと思います。今も昔も強さを感じますね。
────Shouさんについてはいかがですか?
武瑠:なんか難しいですね。ここまでドラマがあって関係もあるともうフラットに見られないんですよね。共感することもあるし、この人が今こういう歌を歌ってることに意味があるとかも理解できちゃうし。Verde/になってからの曲では「Hope/」がめっちゃハマってると思います。なんかね、そういう風に見ちゃうんですよね。
Shou:僕的には武瑠の仲間入りを果たすために「The Wanderer/」って曲を書いたつもりなんですけど(笑)。
一同:(爆笑)。
Shou:わかんないもんだなぁ~。
武瑠:でも、真面目な話自分に何が似合うのかって本当にわからないですよね。
────お三方はご自身が歌えば自分の曲にしてしまえる強さがある故な気がします。
武瑠:Verde/もサビが開けるとShouさんになりますしね。俺は「Hope/」好きです。あとバンドとの違いで言うとアートワークの方向性とかも近くなったように感じてます。仲間入りとか言われると烏滸がましすぎるけど(笑)。これはお互い感じてる気がする。
Shou:そうだね。昔はアートワークに関してはファンの要望を具現化して下さる方にお願いしてたんだけど、今は方向性が変わりましたね。プロ志向といいますか。武瑠も本物の人しか仕事しないもんね。
武瑠:クリエイターは本当に信頼している人としかやらないです。
Shou:この人と仕事しておけばオイシイとかじゃなくて、ちゃんとクオリティを見てるよね。
武瑠:大事ですよね。美術家の方に依頼することもあるんですけど一切採算取れないですもん(笑)。
Shou:武瑠もそういうところなかなかイカれてますよ。
武瑠:Verde/のアートワークが好きで、いつもは自分で全部やっちゃうんですけど今回はShouさんにお任せしました
Shou:僕のチームでね。
武瑠:最近そういうの多いんですよ。去年[ kei ]君とやらせてもらった時も、コンセプトはこっち発案だけどヴィジュアルイメージはお任せしたり。前の自分だったら考えられないことですね。そういう化学反応が今は楽しい。Verde/も曲に合わせてアートワークが出てたのとかすごい良かった。
Shou:コンセプトアートだけで成立させるのは世界基準からしたら当たり前だからね。これ、ヴィジュアル系がやらなきゃいけなかったことなんじゃないの?って思っちゃう。
武瑠:僕もそう思います。the GazettEとか毎回アートワークでドキドキするもんな。
Shou:後輩としてthe GazettEのライヴを観に行かせて頂いた事は何度もあるんですが、最初はミュージシャン目線で見始めても、3曲目ぐらいにはファンとしてマジで楽しくなっちゃってお客さんのヘドバンの髪の毛とか当たっても全然気にならないの。それでライヴが終わってエンディングの動画が流れるまでずっとワクワクさせてくれる。
武瑠:あれドキドキしましたよね~。
Shou:ヨーロッパの葬式みたいな映像あるけど、AIもない時代だから本当に撮影行ってたんだろうね。
武瑠:崖から車落とすカットも実際に撮ったって聞きましたよ。
mitsu:すげー!
武瑠:1テイクしか撮れないから絶対ミスできなかったって。
────血が継承されてるんですね。
mitsu:僕はヴィジュアル系にルーツがなくて、ν [NEU]になってから学んでいったんですけど、今この話を聞くとおふたりの根底にはヴィジュアリズムがあるんだなって思います。自分は泥臭いものでやってきたので、今お話しを聞くことによって“だからこのおふたりはこんなに共通項があるんだ”って気がつきますね。自分が思うヴィジュアル系の中にも種類…いくつかジャンルがあるんですけど、その中のひとつの頂上にいるのがShouさんなんです。自分はソロとヴィジュアル系って真逆だと思ってるんですけど…
────それは何故でしょう?
mitsu:これは時代にもよるから今は違うと思うんですけど、そもそもはリアリティを隠すジャンルじゃないですか?でも、ソロってバンドという集合体で隠れてたものが360度さらけ出るから、リアリティが大事になってくるんですよ。その分、美学やヴィジュアルとは真逆ってことです。だからソロになってカッコ悪くなる人もいるって勝手な印象があったので、Shouさんがソロをやりながら美学を貫くっていうスタイルでいることにすごく興味があります。その先にあるものはなんだろう?ってヴィジュアル系のSOLOISTの根源に触れられる気がするんです。自分はν [NEU]に入った頃にPS COMPANYのイベントで武道館、EMIのイベントでさいたまスーパーアリーナでMIYAVIさんを観てるんですけど、もうとんでもない衝撃だったんですよ。それは音楽以上に香り立つ生き様が。今日おふたりと話をして、ヴィジュアル系の美学ってここにあるんだってすごく嬉しくなっちゃいました。自分は通ってきてないし、ヴィジュアル系のソロってものにも必ずしも肯定できないけど、すごく納得したと言いますか。面白いなぁ。
────mitsuさんはν [NEU]のラスト渋谷公会堂に向けての心情を“青白い炎”って仰っていた記憶があるんですけど、実際あのライヴはどんどん迫りくる感情に押し流されてとてつもなくドラマティックになったじゃないですか?青白い炎どころか燃え盛る真っ赤な炎で。ヴィジュアル系とか、バンドとか、ソロに限らずリアルな人だなと思ったんですよ。
mitsu:ヴォーカリストとは何ぞや?って突き詰めるとやっぱり感情が根源にあるんです。生きているかどうか、命の揺らぎがあるものにヴォーカリストの美学があると自分は思うので、あの日は淡々としてたはずなんだけど、結果的にその揺らぎが崩壊して最後ああいうライヴになったんだと思います。ヴィジュアル系は畑だと思ってて、ν [NEU]はそこにできた野菜なんですよ。育ててもらった感覚なんです。僕はヴィジュアル系を背負うなんてことは思っていないし、恩返しできるレベルに到達してない。単純に歌が好きで、ヴォーカリストが好きなだけ。でもそれがリアルに響いたのかもしれない。
Shou:でも実は俺も武瑠もヴィジュアル系がルーツにあるわけじゃないからそこはmitsuとも一緒なんだよね。それこそHi-STANDARD、Dragon Ash、山嵐とかを聴いて育っているので。
武瑠:そう。実は俺も始めてから勉強したところはある。
Shou:だからmitsuの話を聞くと他人事じゃない気がするよね。
武瑠:自分がヴィジュアル系を辞めた時は同世代がつまらないなって思ったんです。ヴィジュアル系の先輩に憧れるのは構わないんだけど、そこからしかルーツを得てないのが意味解らなくて。憧れてる先輩は何を聴いて何を見てきたのかとかまで辿ってない人が多かった。だから先輩のことは好きだけど、同期のことはあんまり好きじゃなかったんです。後輩とかからも「武瑠さんレディー・ガガ好きなんですか?」とか訊かれて、“いや、掘り下げ方がそこで止まってるのヤバいな…”ってつまらなくなったんです。
mitsu:あはははは!(笑)
武瑠:でも今だから思うんですけど、新しいものが正しいわけじゃないし、俺も自分の趣味をミックスしたものを作り上げていたので…なんだろう伝統を守り続けている人とか、そこに影響を受けている人が同じクラスにいるってだけの話だったんですよ。
mitsu:自由でしたよね。
武瑠:メイクさえしてればなんでもいいからね。だから、そういう要素もミックスしてスマブラみたいな感じで大集合してまたやりたいと思えてきたんですよね。視点が変わってきたんです。
────まさに任天堂的な。大乱闘はしないでほしいところですが(笑)。
武瑠:2010年代の俺がヴィジュアル系に居た時って、流行り過ぎてファンが力を持ち過ぎてた気がするんですよ。それこそ高田馬場AREAでいろいろなバンドさんと話をすると「本当はもっとこうしたいんだけど、こうするとファンがついてこないんだよね…」みたいな会話が多くて。
mitsu:あー!
武瑠:「こういうメイクしなきゃいけなくて」とか「このノリ絶対いれなきゃいけない」とか「ああいうスタイリングしたいんだけど事務所がダメだって言うんだよね」とかルールが激化していったんです。その時代がすごく窮屈で嫌になっちゃって。それで昨年<KHIMAIRA>を観に行かせていただいたら昔よりファンの純度が高くて自由になってきてるなって感じたんです。あの光景は希望になった。今こんなバンドがいるんだったらヴィジュアル系に参戦してみたいなと思わされましたね。
────その説はお越しいただいてありがとうございます。僕のイベントに関しては看板を担うCHAQLA.とかMAMA.が“わかるヤツだけついてこい”ってスタンスでお客さんを選んでいるからこそ、お客さん自身もバンドを選んでいる自覚と誇りがあるような気がします。今の武瑠さんとノリが近いと思うんですよね。
武瑠:わかる。CHAQLA.はかなり近い位置にいると思う。感覚が。
────武瑠さんのお客さんも似ているような気がしていて、“ヴィジュアル系”っていうジャンルじゃなくて、“武瑠が放つ音楽”をちゃんとチョイスしている自信を感じるからあんなにフロアのムードが良いんだなって思うんですよ。
武瑠:そう思ってもらえるのは嬉しいなぁ。でも、あの辺のバンドが同期にいてほしかったなって思っちゃいますね。もっとヴィジュアル系楽しかっただろうな。
mitsu:CHAQLA.はこの前ライヴが一緒でしたけど良いですよね。なんか武瑠くんも言うように流行り過ぎて飽和してたんだなと思いますよ。そこからコロナ禍で辞めていった人も含めふるいにかけられたから、今は血脈が濃い。みんなそれぞれ良くなかった時代もあると思うけど、上っ面みたいなものが淘汰されてリアルなヤツしか生き残れなくなって、俺はやっと良い時代が来たなって思います。今が最高じゃんって。
────mitsuさんについてはいかがですか?
武瑠:ソロになって声と歌のクオリティが押し出されていると思います。俺の視点でしかないんですけど、バンドの時はサウンド面も含めてバンドのカラーがあるから人格まではあんまり見えてこなかったんですよ。でも、さっき教えてくれたみたいにいろいろな困難を乗り越えてきた人間の魅力が今はさらに凝縮されているしすごく刺激をもらいます。メイクやファッションもちゃんと深堀りしている人だなって思うし。そこのクリエーションがここ数年でグッと上がっていますよね。そのカッコよさが抜けてると思う。多分、mitsuくんは歌のクオリティにクリエーションが追いついてきて同じ高さに今いるんですよ。僕は真逆でクリエーションが先行していて歌唱力が追いついてなかったのが、近年ようやく自分の歌を認められるようになったんです。
────お互い反対から登ってきて山の頂上で合流するみたいな。
武瑠:そうそう(笑)。
mitsu:たしかに。昔から全然違うところにいたのに反対側の高いところに武瑠くんの姿は見えてた気がする。自分は客観視を捨てて、自分の人生だから主観で生きていくって決めてるんですけど、その主観で考えてることをこうやって理解してもらえるのは嬉しいですし、そこに共通言語があるのが音楽の魅力的なところですよね。嬉しい。
Shou:最近はヴォーカリストとしてアスリート的なところに立ち返ってるんですけど、その視点から見ても良いなと思います。
mitsu:ありがとうございます!
Shou:強くて魅力的なチェストがバンドサウンドを突き抜けてくるんですよね。大概の人はそれができないからミックスの音域にいくんですよ。周波数とかヘルツを上げるとバンドサウンドと分離するから抜けてはくるんだけど、mitsuは高いところも出るけど、チェストで勝負できるのがヴォーカリストとして素晴らしい。それは体幹の強さもあって、ボクシングで鍛えてるのも活きてるはず。それでいて動きも指先まで繊細。僕も武瑠と一緒で客観的に何が必要かをプロデューサー目線で考えるんですけど、逆にヴォーカリストとしてのフィジカルアスリート性の弱さに繋がっていると思ってて、ソロになってからはアスリート的なトレーニングをしてるんですよ。そういう自分から見てアスリートの領域で素晴らしいヴォーカリストだとmitsuのことを認識してます。だから生でやり合えるのが楽しみですね。
────Shouさん今シャウトも鍛えてらっしゃるんですよね?
Shou:でも俺シャウトとかの方が得意なんですよ。もともとメタルとか激しい音楽で育ってるし、声帯が長いから勝手に声にローがつくんですよね。体格的に恵まれてるんです。
────ところでmitsuさんの印象って変わりました?
武瑠:って言うか2人はこういう形で取材したことあるの?
mitsu:まっっったくない!
Shou:初対面の時に「お近づきのしるしに、誰でも気にいらないヤツ1人…(以下自主規制)」って言ってきた男なんですよ?
一同:(爆笑)
────おなか痛いです(笑)。勘弁してください!
武瑠:頭イカれてますね(笑)。
Shou:パンチあり過ぎるでしょ?(笑)。その時から人間的には変わってない(笑)。このナイフみたいな危険なピュアさがmitsuの良いところでそれが大好きなんですよ。全肯定。初対面からしばらくした後に再会して「なんでSNSフォローしてくれてるんですか?」って聞かれたから「いや、大好きだからだよ」って話をしたのを覚えてる。いや~mitsuはこの真っ直ぐさがたまらなくカッコいい男なんですよ。だからアートワークがどうとか、歌がどうとかぶっちゃけどうでもいい!(笑)。
一同:(爆笑)
────最後の最後に壮大なオチが(笑)。
mitsu:いや、めちゃくちゃ嬉しい!この場をセッティングしてくれた武瑠くんに感謝ですよ!今日で一気にイベントが楽しみになりましたね。ソロでやってきた“ヤツら”って敢えて呼びますけど、こういう“ヤツら”は面構えが違いますよ。ただ、正直ここまでヴォーカリストとして広い視野で見てることが勉強になりましたね。自分は「水深」っていう曲でようやくヴォーカリストからアーティストになれたと思ってるんですけど…
武瑠:あ、なるほど。そういう部分も引っかかったんだと思う。
mitsu:今日は2人がアーティストの視点から何を見てきたかが知れたので、自分の知らなかった視点のSOLOISTに気が付けたし、自分が少しだけ2人に追いつけたから呼んでもらえたのかな?って思います。あ、やっと次のステージまで来れたんだなって。
武瑠:嬉しい。俺はずっと待ってたんですよ。ソロで誰かカッコいいヤツ来い来い来い!って。