【KAKUMAY】ライヴレポート◆2025.02.06<KAKUMAY ONEMAN TOUR GRAND FINAL「GOAT」>Zepp Shinjuku◆KAKUMAY史上最大の挑戦 Zepp Shinjukuで叫んだ「人生は実力でしかねえぞ!!」
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4年前の今ごろ、彼らは始動ワンマンの発表をしていた。
当初から声高に叫んできた夢、それは“Zepp DiverCityに立つ”こと。
この言葉にどれだけの強度と信憑性があったのかは定かではない。
もっと言えばバンドマンである以上、果てないキャパシティを目指し続けることがある意味での正当さでもある。
それでも届かぬ先に楔を打ち込む必要性があった。その心が砕けぬように。
2023年3月のO-WEST以降、彼らは挫折を赤裸々にしながら着実に成長を続けた。それは目に見える券売・セールス以上にバンド力も然り。
2025年2月6日。4人体制になった彼らはついに夢の場所へと肉薄するZepp Shinjukuへと歩を進めた。
誰の目にも明らかな「X DAY」。
KAKUMAYはやはりKAKUMAYだった。
ONEMAN TOUR GRAND FINAL「GOAT」
彼らのファンの呼称である“GOAT”を冠したライヴタイトルからもこの日に賭ける決意と覚悟が並々ならぬものであることは明白だ。
そもそも、このライヴは「VISUAL」と銘打たれた全国ツアーのGRAND FINAL公演でもある。
象徴的な2つのワードがぶつかり合う運命の交差点とも言えるZepp Shinjukuは当然史上最大の難敵とも言えるだろう。
そんなことを考えていると、KAKUMAYの節目のワンマンではお馴染みとなった開演をアナウンスするカウントダウンがLEDヴィジョンに流れ出す。
カウントが0になるといきなり映し出されたのは“NEW VISUAL”の文字と真紅を基調にしたハードドレッシーな新たなアーティストフォトだった。
この大一番に最新の姿で臨むことで“VISUAL”を基軸に置く気概も決して忘れない。
巻き起こるクラップのなかアピールしながら楽器隊が登場し、最後に真虎(Vo)がステージに歩を進めると始まったのは耳馴染みのないナンバー。“ごめんね上手く飛べず”という歌い出しから始まる1曲はアザミ(Gt)のフレーズがフックとなり不穏さを生み出すものだった。
“いつ死んでもいいや”というリリックも飛び込んできたが、メロディアスでめくるめく展開で疾走するこの曲、「KING」と名付けられていて、この日への意気込みとも感じられる。
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未発表曲を序曲に据える実に挑戦的なオープニングだが、背景のヴィジョンに映し出されるムービーには鳥かごに捉われた鳥の姿も映し出され、「KING」が絶対王者的な楽曲ではなく、新たに目指す先にあるものだと解る。
サイケデリックに躍動する「UNCHAIN」、轟音ミクスチャーの「噛み跡」、さらにはバンドとしての引き出しの豊富さを感じさせる「SICK’S」とお馴染みの楽曲から比較的新しい楽曲が連ねられたが、意外だったのは落ち着きすら感じさせるメンバーの振舞いだった。これまでのKAKUMAYはそのストレートな衝動と同時に脆さを感じさせる一面もあるにはあったが、この日は驚くほどに冷静かつ各パートがスキルだけでなく楽曲のニュアンスを抽出するようなプレイに徹していたのも印象的だ。
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昨年リリースされた「SICK’S」はすでに音源以上にソリッドなものに仕上がっていて、だからこそ4人になったKAKUMAYの進化が早くも浮き彫りになる。
晴(Dr)が立ち上がり会場全体を睨みつけて始まったのは、一気に風速を上げたレアナンバー「GOD OF WAR」。
壮絶なコールレスポンスで加熱していくが、この会場でプレイされることでKAKUMAYに脈々と流れる“節”を改めて再確認させられる。
“よく来たな!Zepp!!”
“ヴィジュアル系としてZepp Shinjuku立ててます!”
真虎が手短に告げると、この公演を発表した昨年4月の恵比寿リキッドルームワンマンで火蓋を切って落とした「アーティスト」、「BITE」とハードネスが迸る楽曲を続けざまに投下。
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浸透率の高さをみせる「IDOL」では早くもこの日何度目かのCO2がレーザーと交差して妖しさを増していく。ステージギリギリまで迫り出していくゆいと。(Ba)は相変わらずのステージ勘の良さで奥行きを生み出しているが、よくよく考えると4人体制になって下手サイドの一翼を一手に担うこととなった現在でもそのバランス感覚がブレることがないあたりに彼の自信とプライドが伺える。
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激情に委ねるプレイがどこかパンキッシュなエッセンスを加えていた晴のドラミングも、以前より歌心を感じるものへと変貌していることに驚く。
かたやデジタリックな「酩酊」ではこれまでになく情熱的に弾き倒すアザミのソロも際立った。コンパクトに挟み込まれるゆいと。のフレージング然り4人体制になることによる不安をそれぞれのプレイで払拭していく様は、本来の詞解釈とは異なるが“あなた無しでも生きていく もう私に迷いは無い”という言葉にリンクするように響くものだった。
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そのタイトルからして衝撃的な「私を不幸にしたお前をぶっ殺す」。
その象徴的なタイトルのイメージと反するような流麗なメロディと温かみのあるムードがささくれのように真虎の言葉をそば立てる。報われない恋を男女それぞれのアングルでドラスティックに描く世界観と、人称を“あなた”、“君”、“お前”と組み替える手法はこれまでにない新境地だ。途中、疾走するリズムが余計に取り残される感情を掻き立て、真虎は言葉にならない想いを感情のままに叫び続けた。
彼らが昨年9月のSpotify O-WEST公演で提示した「私を不幸にしたお前をぶっ殺す」3部作は「酩酊」、「SICK'S」と続いて「私を不幸にしたお前をぶっ殺す」で完結するのだが、正直なところいずれも意外性はあれど、これまでのKAKUMAY像を刷新するものではない。むしろ4人になっても変わらぬ彼らの核を感じさせるものだったが、ことライヴになるとそのイメージとは真逆で、新しいKAKUMAYを存分に届けてくれた。無論、フレージング以上に歌唱とプレイの温度感の緻密さ故であることは言うまでもない。漠然とした意識ではなく、言葉にできぬ葛藤を直視しながら全国を廻ってきたことで生まれた逞しさは音に変わり形となる。
「Freak Freak」、「シリアルキラー」ではライヴ感を増幅させ、会場全体を巻き込んだ。
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MCでは“どうでした?Zepp Shinjuku立って?…ん、どうすか?どうすか?”と真虎があまりの自然体でメンバーにマイクを振る様に笑いが起こる一幕も。
この場面もだが、取り繕わない自然体で対峙できる強さと一種の余裕が今のKAKUMAYにはある。これまで様々な出来事があったが、なんとかこの日に辿り着いたことに謝辞を述べ披露されたのは「Be My Last」。
“もし君が最後の日をこの日に決めたとして きっと僕は変わらず今日も歌い続けるよ”白い光に包まれた愛の歌。KAKUMAYのレパートリーの中でもある種異色な美しいナンバーもこの日にこの会場で披露されることに意味があるが、この歌い出しの前に真虎がボソっと呟いた“歌うことが好きなんだよね”も観客の脳裏に刻まれたのではないだろうか。
この曲の終盤“お前らを救う!って歌ってきたんだよ!”、“全員が全員を救えると思ってない。俺たちのやり方で、音楽で、お前たちを救っていくからな!”と吠えたが、すべてはこの場に集結した“GOAT”に向けられたものだ。
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“負けてばかりの人生、今から一緒に勝ちにいこう”と鼓舞した「WINNER」、そのイントロから明らかに会場の空気が一変する押しも押されぬ彼らの奥義「No.1」と会場のヴォールテージはピークに。
「No.1」における地鳴りのような歓声でも明らかだが、彼らが誇るポジティヴィティは鬱屈した暗闇の中から抜け出すためのもので、その過程に意味を成すからこそ、その時期によって意味合いにも深みを増していく。
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ここから間髪おかず雪崩れ込んだ「共依存」、懐古的だが決して郷愁性だけでない、メロディアスな「東京」、よりタイトになったキラーチューン「哀なんて青春。」とKAKUMAY史には欠かせないナンバーを続けざまに披露。
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オーディエンスと確かめ合った結果、メンバーは笑顔でステージを謳歌する。
これまで様々なエッセンスを取り入れながら歩んできたKAKUMAYというバンドに一本の幹が生まれているからこそ、自然体であることも、笑顔を振りまくことも、感情過多に叫ぶことも求心力を増している。
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KAKUMAYってどんなバンド?と問われたら、間違いなくこう答える。“KAKUMAYは諦めないバンドだ”と。
固い意志と地道で弛まぬ努力の積み重ねでO-WEST、恵比寿リキッドルーム、Zepp Shinjukuをなりふり構わず手繰り寄せてきたここ2年に撒いた種はもう芽吹くところまできている。その道中の全てが順風満帆だったわけではないし、苦節を味わった時期もある。それでも自らの背中をメッセージとして体現する様は日に日に説得力を生み、彼らは今に至る。4人体制になって歩みを止めなかったこともそうであるし、そもそもバンドマン生命すら危ぶまれたゆいと。は指の手術以降も相変わらず低く構え変わらぬプレイスタイルを築き続けている。“諦めるな“その言葉を力強くするために歩んできた。
いや、歩んできたから強くなれたのかもしれない。
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ライヴも佳境を迎えた時、バンドの顔として強いフロントマン像を確立し続けた真虎はこう本音を吐露した。
“くじけそうでした。本当に怖かった。”
これまでに見せてこなかった一面が垣間見えたのは、達成感の安堵からくるものか?はたまた弱さを孕んでたどり着いた景色の理由を彼なりに“背中”で見せたかったからなのか?答えは真虎のみぞ知るが、恐らく後者であろう。
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KAKUMAYにとって大切な曲を届け“させ”てくださいと告げたのは「ニアリーイコール」。ツアーでは演奏されなかった曲だ。決意の楽曲は光と共に一面に銀テープも飛んだ。
不器用ながら絞り出して感謝を伝える1曲に4人のメンバーは目頭を熱くさせ、万感の想いを音にのせた。
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“お前らひとりひとり、野望とか夢がないって言ってるならそれは嘘だ!そのひとりひとりの夢や野望は…絶対に俺たちと一緒に叶えていこうな!!!”
ラストは「反抗期」だった。彼らにとっても分岐点となった1曲で、死生観から前に進むスピリット全開の激しいナンバーで最後にZepp Shinjukuを混沌に陥れてみせた。
全20曲、120分間。
これまでの歴史を包括したメニューから明らかになったのは、
彼らはずっと変わっていないという事実だった。
ずっと言い続ける“諦めない”という言葉。信じる者に届けるためにそれを自らの身体に背負わせてきた。
正直ピンチは何度もあった。それでも愚直に進んだ。
その結果、この日“諦めない”以上に多く届けられた言葉は“ありがとう”だった。
優しくなったわけでもカドが取れたわけでもない。初めからこう伝えたかった。
輝く「ニアリーイコール」の景色はこれまでの総決算でもある。
だが、真虎は最後にこうも叫んだ。
“人生は実力でしかねえぞ!!”
十字架を背負うことでやっと歩き出せる彼らしい言葉だ。
この日、期待された“約束の場所”は発表されなかった。
ここからKAKUMAYは再び全国を廻る。己を鍛えるために。
あと少し、もう少しだけ旅は続く。あの場所へたどり着くその日まで。
Text:山内 秀一
Photo:菅沼 剛弘
SET LIST
KAKUMAY ONEMAN TOUR
GRAND FINAL「GOAT」 Zepp Shinjuku
<SET LIST>
SE:KING&QUEEN
01.KING
02.UNCHAIN
03.噛み跡
04. SICK'S
05.GOD OF WAR
06.アーティスト
07.BITE
08.IDOL
09.酩酊
10.私を不幸にしたお前をぶっ殺す
11.Freak Freak
12.シリアルキラー
13.Be My Last
14.WINNER
15.No. 1
16.共依存
17.東京
18.哀なんて青春。
19.ニアリーイコール
20.反抗期
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■KAKUMAY ONEMAN TOUR 「KING&QUEEN」
≪公演日程≫
2025/4/2(水)渋谷近未来会館
発売日:2/15(土)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02gnb9fxf4941.html
2025/4/12(土)仙台spaceZero
発売日:2/16(日)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02npehk5g4941.html
2025/5/3(土)札幌SPiCE
発売日:2/22(土)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02hekieeg4941.html
2025/5/4(日)札幌SPiCE
発売日:2/23(日)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02y7mbpig4941.html
2025/5/10(土)池袋EDGE
発売日:3/2(日)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/023knimsg4941.html
2025/5/20(火)福岡INSA
発売日:3/8(土)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/024bui0rz5941.html
2025/5/30(金)赤羽ReNY alpha
発売日:3/9(日)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02y6082f06941.html
2025/6/28(土)心斎橋soma
発売日:3/15(土)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02emsggs16941.html
2025/6/29(日)HOLIDAY NEXT NAGOYA
発売日:3/16(日)11時より発売
チケット購入→ https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/020j0bv1sa941.html
関連リンク
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