【umbrella】ライヴレポート◆<umbrella 15th anniversary oneman 【アンブレラ】>2025年3月14日(金)大阪味園ユニバース◆15周年ワンマン、悲願の5年越し聖地味園ユニバース有観客で“証明した”熱演!6月23日にはBIG CATで主催「路地裏サーチライト」も決定!

大阪に拠点を置く空間系オルタナティブバンドumbrellaが結成15周年となるワンマンを地元・味園ユニバースで行った。
昨今うつろいの早いシーンの事情を見ると、地元に根差しながら15年もの時を音楽と共に歩み続けることの偉大さ、もっと単刀直入に言ってしまえば“難しさ”もよくわかる。
この日はumbrellaがこれまで刻んできた歴史を享受する結成記念日だ。
それはumbrellaの4人だけでなく“傘人”と呼ばれるファンも含めて。
そんな記念すべき夜の模様をレポートする。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
会場に入ると目を引くのは、ステージ背景に鎮座する煌びやかなネオン管、天井から吊るされた大型の球体式照明。さらにスタンディングエリアの後方にはソファーも数多く設置されていて“特異”の一言では片づけられない情報量だ。
この味園ユニバースは戦後すぐに建設された、味園ビルの地下に位置するキャバレーである。同ビルにはダンスホール、宴会場、無数の雑多な飲み屋、かつては宿泊施設もあり、大阪の裏ディープスポットの象徴的な存在でもある。
国内を代表する趣のある会場だが、今年6月に閉館することが報じられており、この場所で鳴らされる音楽の残り時間も日々刻々と減っていく。何とも悲しい話だ。
umbrellaにとって同会場は昨年10月に開催した主催イベント<umbrella presents 「路地裏サーチライト」>以来であるが、そもそもの歩みを遡ると結成10周年の2020年3月14日に<umbrella 10 th anniversary oneman 【Chapter.10 「心に
傘を」 】を開催予定でもあった。“予定”というのは、忘れもしない世界的パンデミックの猛威により延期を余儀なくされたからだ。その後、同年5月にスライドするも再延期。
結果的に翌年2021年3月14日に<10-11 th anniversary oneman 「長い雨の日々、全ての心に傘を差す>にてついに味園ユニバース初ワンマンを果たすが、彼ら4人の前でその音をダイレクトに浴びることができる観衆は0人だった。
ずっとこだわりをもってきた会場だからこそ、有観客ワンマン開催が15周年当日、しかも閉館直前に執り行われること自体がすでに奇跡とも言えるが、それは他ならぬ4人が“諦めの悪い”男たちで居続けてくれたからにほかならない。
定刻をやや過ぎたところでようやく暗転。
薄青く照らされた光と共に滴る雨音。SE「アマヤドリ」に導かれてひょうきんな将(Dr)、クールな柊(Gt)と春(Ba)が順に登場する。いつもと変わらぬ光景なはずだが、早くも緊張感だけではない高揚が、その地鳴りのような歓声から感じられる。フロアの鼓動の高まりを察したようにSEの音圧が一段上がると、最後に唯が(Vo&Gt)が現れた。
ムーディーなアルペジオに唯のファルセットが重なると、始まったのは「「月」」。
リズムインと共にネオン管が色艶やかに輝きだした。2021年の無観客ワンマンの際にも序曲に据えられた1曲は単に豪快ではなくも、力強く逞しいサウンドが響き渡る。低音と高音を使い分ける唯の歌唱も淡々としているからこそエモーショナルになぞらえ、柊と春のコーラスワークからもバンドとしてこの夜に賭ける想いがバシバシ伝わる。

“答えはいつも見えなくても それでも人は歩き出す”
時を経て15周年に辿り着いた今、再びこの場所で歌われることに意味がある。
オープニングナンバーからすでに涙を流す聴衆も多く見受けられた。
“私たちの誕生日はじめます!”と告げられた「ヨルノカーテン」では明滅する光にフロアが縦揺れを見せる。彼らのロックはカラッとした気質のものではないが、雨に濡れた路面に反射するような特有の光を有する。
ダークでもないし、ポジティブでもない。だが、キャッチーでスキルフル。しかし、しっかりと血が通っている。抜けのよいサビも見事だが、職人として屋台骨を支える将が、ふとメンバーの後ろ姿に目を配る何気ない場面もこの日は特別に感じさせた。
ようやく有観客の味園ユニバースでワンマンを開催できることへの謝辞を手短に伝えると、柊の妖しげなカッティングが映える「Frontier」へ。オーディエンスは一気に頭を振りしきり応える。将のミュートしたスネア、歌詞に合わせた唯のマイムも楽曲の展開のドラマティックさに傾きを生む。

▲唯(Vo&Gt)
「リビドー」、「モノクローム」と春のベースがこれでもかと暴れ狂い主張してくる2曲も然り、激しい楽曲こそ繊細なプレイで立体的に構築されるのがumbrellaこの15年の武器だ。俗に言う“気持ちよいサウンド”を欲しいがままにしているからこそ、雄弁に詩世界を後押しするアウトロも聴きごたえ抜群なのが大きな特徴だ。
比較的クールなステージワークの唯と将が担うセンターラインと対照的に、精妙に躍動する弦楽器隊の柊と春のコントラストも大味でないからこそ玄人好みなのも頷ける。

▲柊(Gt)
昨年リリースの「傘はいらない。」ではウェットな哀愁で潤すと、水音を導入したイントロから荒廃した精神状態を映像的に想起させる「anima」へ。指弾きに切り替えた春が楽曲の表情を薄暗く色づけていき、ラストのサビでは微熱を与えるように、柊がフレージングを寄り添わせていくことで物語を秀逸に昇華させる。最後、電話のビジートーンが響くと世界は残酷に遮断された。

▲春(Ba)
“今、関西でこのバンドが一番この会場が似合うと思っています。今日umbrella、改めて証明してみせます。”
曲のタイトルコールと共にシンフォニックなイントロが告げたのは「軽薄ナヒト」。
エロティックで退廃的なムードをネオン管が照らす光景はどこか非現実のように淫靡でもある。ここでは、気だるそうにドライな質感にシフトした唯の歌唱と、のびやかでレンジの広いサビのグラデーションで会場を包む。メンバーが向かい合ってグルーヴを生み出していく姿も印象的だった。まさにこの会場でプレイされることが相応しい。そんなことを考えていると続いたのは、こちらもまさにこの日にプレイされることが待ち望まれていたであろう1曲だ。

「軽薄ナヒト」へ贈られた拍手が鳴りやみ、静寂が訪れてから存分に想いを充満させて始まったのは名曲「管」。
荘厳さと切なさと空虚が絡まりあうumbrellaが誇るパワーバラードだ。スケール感のある楽曲でこそ、息づくような歌唱とプレイは紐づき形を成す。その音楽は体内に潜りこみ、細胞と同化する。そしてそれはもともと自己と同一で繋がっていたことに気がつく。「管」に吸い込まれているようでいて、あるいは吸い込んでいるのかもしれない錯覚に陥る。
強烈なハイライトを残すとライヴは中盤戦に突入。
“いけるよな大阪?みせてくれここで!”とアジったのはノイジーでアグレッシブな「「愚問」」。この日初めて声を荒げた唯に呼応するように自然発生的にシンガロングも巻き起こった。
愛機が並べられたシンプルなステージが一層フロントメンバーの個性を強調したダイナミックな「「群」」。

再び疾走したのは「五月雨」。柊のかき鳴らすコードと共に一気雰囲気が切り替わる。昨年10月以降の彼らのアーディストフォトはモノクロの仕様だが、4人から放射されるエネルギーとメロディーラインは色彩豊かなものだとも感じさせる。
温もりと冷気がせめぎ合うからこそ、涼しい将のドラミングは丁寧に語りかける「solitude」。
演奏技術の高さもさることながら、各パートが歌うように隙間を縫って程よく的確に主張してくる様は真骨頂といえる。

▲将(Dr)
爆発的な盛り上がりを見せたバンドの切り札的「dilemma」でピークを生んでからは10年以上前からバンドを支えてきた初期曲の応酬でこのアニヴァーサリーに花を添えた。
14年以上前に時を遡上する「Powdery Snow」では柊が指でつまびくフレーズが優しく際立ち、11年前にリリースされた2nd Single 『Knocking…』のリード曲「Door」では唯の“おめでとうumbrella!”に、すぐさま返ってくる“おめでとう!”の歓声が温かい空気を運ぶ。左右に揺れる掌に、どこか柔らかい表情を見せたメンバーが一転して殺気を放った痛快なギターロック「レッドシグナルデイ」では真っ赤な照明が刺すように会場を照らし射抜いた。
実のところ、過密なツアースケジュールで自身のキャパシティの限界まで追い込まれた唯の喉は、前日はおろか当日朝の段階でも発声するのがやっとだった。本番直前のリハーサルでようやく歌唱可能なところまで回復したのだが、いざ本番の幕が開いてからは不調を感じさせるどころか絶好調で実に見事だった。この数年こだわり続けてようやくたどり着けた味園ユニバースでの有観客ワンマン、何か常識では説明できない力も味方しているようにすら感じさせる。
「Orbit」ではついにオフマイクで絶叫!カタルシス集中砲火で終盤戦に突入。
ここまで来たらもう後先を考える必要もないとばかりに19曲目にしてキラーチューン「アメイジング」をドロップ。
“出番だぞお前ら!来いよ!かかってこいよ!”

言われるまでもなく、一気に束ねられブチ上がるオーディエンスの姿も眩しいが、“悔いだけは残すな!”と執拗に煽る唯の発言どおり、この聖なる場所で奏でられる時間があとわずかだからこそ出し切らずに終われない。
曲間のブレイクで定番となった煽りでも春が“味園ユニバース来てくれてありがとう!最高や!”とシンプルな言葉を届けた。
歌モノと醸しだすディープな世界観に定評のあるumbrellaだが、昨今彼ら自身が自認するようにハードサイドにもバンドとしての殺傷能力の高さを誇る。
ハードロックがアメリカンな様相を呈する「HALO」では柊の背面ギターしかりゴキゲンな空気で謳歌してみせる。
なんとここまで20曲、思えば15年の歴史を振り返るように表題曲で構成されたメニューとなった。レアナンバーを含めて脈々と受け継がれる彼らのサウンドとメロディの美しさと文学的な通念は変わらずに磨き上げられ続けているもので、いつの時代に彼らに出会った者にとっても納得な内容だったのではないだろうか。
“どんだけ苦労しても、頑張っても…報われへんとか、叶えられへんこともすごくあったし、自分の身の程も解ってる。そんな時もあるけど、それでもずっと続けとったら、その隙間隙間に良かったなと思える光があったなと思いました。それが今日かなと。今日、一番光ってるんじゃないかなと思います。本当にありがとう。”
この唯の言葉に続くように、メンバーがこの15年に対して想いを述べる場面で印象的だったのは、ここに辿り着くまでの道のりが平坦でなかったこと。そして惰性でなく地を踏みしめてきたからこそ、振り返った時に広がる道は誇らしいものであると彼ら自身が認めることができる日が訪れたのだと伝わることだった。
出会いがあるように別れもある。その中で拾い集めた欠片を輝かせる結実の夜、誰一人欠かせない存在であり、これはバンドやスタッフだけでなくオーディエンスにとっても共に掴んだ時間だったことは明らかだ。求め合えたからこの道が続いてきた。
ラストナンバーはもちろん「アラン」。
唯がなびかせる指揮棒に導かれるように大歓声が響く。umbrellaと集結したオーディエンスのコーラスの掛け合いもいつも以上に美しく求め合う至福の光景だ。
最後は茶目っ気たっぷりにメンバーとオーディエンスで、定番になりつつある“音楽!?最高!”のコール&レスポンスを繰り返しユーモラスな一面も見せてくれた。
全21曲を終え、堂々とステージを去るメンバーの顔つきは、感情が溢れ万感ながらに堂々としたものだった。
この日のセットリストは21曲で構成され、ラストに「アラン」を配することに意味があったためアンコールは用意されていなかったのだが、一向に鳴りやまない求める声を受けて予定外の再登場。

春の“音楽最高!じゃ終われへんか…”で爆笑を攫うと、唯が“最後、死ぬ気でいけんのか!?”とトドメの「Witch?」をプレイ。
フロアが過熱の一途を辿ったことは言うまでもなく、“この夜を照らしてる「月」を見よう”と「「月」」で始まった夜を、“「オボロヅキ」の夜さ”と歌う「Witch?」でクローズする素晴らしい物語の締めくくりとなった。
まさに彼らとオーディエンスの執念が掴んだ忘れ難い一夜としてバンド史に刻まれると同時に、大阪の地で文化の住処として根を張った味園ユニバースにも報いる名アクトだったと言える。
2020年当時にワンマンのチケットを手にした全ての人が漏れなくこの2025年に辿り着いたかは証明のしようがない。運やタイミングはどうしたって何事にも作用してしまう。
だが、忘れてはならないのは5年前のあの日に絶望した感情は未来で粉々に砕かれたという事実だ。
MCで将が明るくこう語った。
“みんな15年続けてること何かある?って思ったら1個思いついたんですよ。…生きること。みんな15年生きてる!あはははは!いぇーい!”
何気ない日常の中で置き忘れた感情を確かめるようなシーンだった。生きていればネガティブな出来事の方が記憶に残りやすいものだが、それを払拭するためには生きていくしかない。矛盾のようだがこれは事実だ。そしてumbrellaもまた16年目を、未来を生きていくことを誓っている。
奇跡は起きた。約束は守られた。
6月23日には主催イベント「路地裏サーチライト」を大阪BIG CATで開催することも発表された。
16年目にして地元の大会場で、史上最大規模の挑戦をする。
生きることで起きる奇跡を手繰り寄せるために、umbrellaはこれからも孤高のロックを鳴らし続けるだろう。此処、大阪で。
Text:山内 秀一
Photo:おにてん。
SET LIST
umbrella 15th anniversary oneman 【アンブレラ】
SET LIST
SE.アマヤドリ
1.「月」
2.ヨルノカーテン
3.Frontier
4.リビドー
5.モノクローム
6.傘はいらない。
7.anima
8.軽薄ナヒト
9.「管」
10.「愚問」
11.「群」
12.五月雨
13.solitude
14.dilemma
15.Powdery Snow
16.Door
17.レッドシグナルデイ
18.Orbit
19.アメイジング
20.HALO
21.アラン
EN1.Witch?

umbrella presents【路地裏サーチライト】
2025年6月23日 (月)心斎橋BIGCAT
【出演】
umbrella
色々な十字架
heidi.
メトロノーム
メリー
OPEN 17:00 START 17:30
【チケット料金】
前売6500円 当日7000円 (税込・ドリンク代別)
【チケットオフィシャル先行】
3/15(土)10:00〜3/30(日)23:59
【チケット一般発売】
4/20(日)10:00〜
受付URL:https://eplus.jp/umbrella/(先行・一般共通)

KHIMAIRA-vol.8-
6月14日(土)
OPEN 16:00 / START 16:30
umbrella
色々な十字架(トリ確定)
鐘ト銃声
201号室
Z CLEAR
NETH PRIERE CAIN
前売り¥5000 未成年¥500 いずれもドリンク代別
最速先行抽選 3月22日(土)22:00~3月30日(日)23:59
https://eplus.jp/khimaira/
関連リンク
【umbrella OFFICIAL】
◆Official Site
◆Official X
◆Official Youtube Channel