<KHIMAIRA-Tokyo in Affection->duo MUSIC EXCHANGE YUKI-Starring Raphael-、NICOLAS、XANVALA、CHAQLA.が集った、KHIMAIRA史上最大キャパシティに“愛”が充満した春の夜。◆VISUNAVI Japan presents 「KHIMAIRA -Tokyo in Affection-」2025.03.22 duo MUSIC EXCHANGE

VISUNAVI Japanが主催するライヴイベント「KHIMAIRA」。2024年4月にスタートした本イベントも、ヴィジュアル系シーンにおいてすっかり名物イベントと化している。そこで、発足から約1年、3月22日に「KHIMAIRA」史上最大キャパシティとなるduo MUSIC EXCHANGEにて開催された「KHIMAIRA -Tokyo in Affection-」にはNICOLAS、XANVALA、CHAQLA.と、“-Tokyo in Affection-”というタイトルが付随していたことの鍵を握る存在でもあるYUKI-Starring Raphael-の4組が集結した。
この日のテーマは“Affection(=愛情)”だっただけに、通常時の「KHIMAIRA」にあるザ・対バンイベントのバチバチ感とは少々異なり、温かみを感じられる一夜でもあった。すべては70.(XANVALA / Ba)とSAKU(NICOLAS / Vo)の「Raphaelを纏ったYUKIさんと対バンがしたい」という発言が発端となったとのことで、今回のイベントロゴはRaphaelのバンドロゴを彷彿とさせる書体で表記されていたこともここに通ずることでもあるのだが、ここで言う“Affection”とはYUKIやRaphaelに向けた感情であったことはもちろんのこと、ひいては世代を超えてアーティストたちが紡いできた誇るべきヴィジュアル系という文化へ向けての敬愛の意味でもあったように思う。
“KHIMAIRAエース”を背負って立つCHAQLA.が幕開けを飾り、そのステージには実に気迫がこもっていた。ロックンロールにヒップホップやレゲエを巧みに織り交ぜ、ある時は体にズンと響く音圧で、またある時は異様なまでの陽気さをもって繰り広げられるCHAQLA.の音楽に、人々はなぜ惹き付けられるのか? その要因は、ANNIE A(Vo)がライヴ中に「JAPANESE VISUAL ROCK'N'ROLL from SIX SENSE MUSIC。フリースタイルで音楽、楽しんでいきましょう」とかましたフリースタイルラップの中で明言されていた通り、媚びることなく自身の信じる音を楽しむ姿勢への共鳴ゆえのものだと言えるだろう。

初っ端、自由のシンボルソングとも言える「喜びの歌」をモチーフとしたSEにはじまり、〈俺たちの命の叫び〉と歌い締めに付け加えた「POISON」や「首魁の音」を通し、観る者に新奇な感情を呼び起こす目論みをいとも容易く、しかも忠実にライヴという空間へ描き出すところにこのバンドが持つ威力を痛感せざるを得ない。

▲ANNIE A(Vo)

▲kai(Gt&Cho)

▲鷹乃助(Ba)

▲Bikky(Dr)
そして、鷹乃助(Ba)が惜しみなく主張するベースプレイが壮大感を助長した「Libration-369」を礎として、アイコニックなフレーズを奏でるkai(Gt)がツインボーカルも担って皆でツイストダンスを見せた「極上なLOSER」、スピードアップを求められたBikky(Dr)が痛快なドラムを叩き上げた「ミスキャスト」では歌い合いながら手首をすり合わせる振付が広がり、会場は独特な空気感を漂わせながら加速の一途をたどる。このように己を開放へ導いた先に見出すもの、それがCHAQLA.が提唱する〈開眼〉の核となることなのだ。

こうして、「この曲で何度ものしあがってきた!」とANNIE Aが最前列の柵に足をかけながら前のめりにバンドの士気をストレートにぶつけた「PLAY BACK!!!」に続き、〈これでもか〉と言わんばかりの濃厚なライヴを〈パンクver.〉とした「蛍の光」でハイスピードに締めくくっていった。

見事なまでに、ド頭からクライマックスを巻き起こしていたと言えるXANVALAのステージ。登場するや否やジャムりに乗せて70.(Ba)がオーディエンスを盛り立てる中、颯爽と現れた巽(Vo)が「ここが俺たちの理想郷だ!」と言い放って「XANADU」からスタートし、間髪入れずに知哉(Dr)が高速に叩き上げるドラムが焦燥感を掻き立てた「Bamby」では、バンドとファンとが互いに「かかってこい!」と声をあげて早々に一体感を確立した。目の前で繰り広げられる勢いは破壊的な迫力を帯び、それはXANVALAのライヴスタイルを見せつける基盤を瞬く間に作り上げていったのである。


まさに“ザンバラ”のごとく髪を振り乱した「本能」や、激しさの中にもメロウな表情を織り交ぜた「鮮やかな猛毒」。

▲巽(Vo)

▲Yuhma(Gt)

▲宗馬(Gt)

▲70.(Ba)

▲知哉(Dr)
一貫してアバンギャルドな展開を貫くも、ミドルチューンの「終幕」では息の合ったプレイが光り、最新曲「縷々」に込めた死生観を、XANVALAらしいサウンドメイクでエモーショナルに届けていった。極めつけと言わんばかりにラストに用意した「デスパレート」では、タイプの異なるギタリスト宗馬とYuhmaの回転ジャンプがシンクロしたのをはじめ、メンバー同士が内に向き合いながら気持ちを結集させたことに加え、Λ(※ファン)のシンガロングが響くといったXANVALAの魅力を総結集させたエンディングとなった。

このバンドにある団結力は、いつ何時(なんどき)XANVALAだけの空間を作り上げることができる。ライヴ中盤に巽は「偉大な先輩の文化を紡いできました」と伝える場面もあったが、実際に世代を超えた共演が意味を持つイベントであったからこそふと思い出されたのが、かつてXANVALAが「CULTURE」という曲を生み出したときのこと。ヴィジュアル系という文化において大切なことは保守的な継承だけではなく、破壊と創造をもって自らもその文化へと加わる意義を歌っていたように、まさしく破壊的な勢いをもってXANVALAらしさを爆発させていたこの日のライヴは、彼らの在り方を再確認させるに十分なアクトであったと言えよう。
NICOLASのターンになり、幕が落とされたと同時に板付きの状態から放たれたピアノの旋律によって会場は欝々とした空気に包まれた。それと同時に所々からハッとするような歓声が起こったのは、その曲が前身バンド・ゴシップ時代の楽曲「堕国」だったからだ。

久々の演奏だった嬉しさを差し引いても、表現力の高さによって重厚感ある世界観に飲み込んでいく力は圧倒的。一変、AKANE(Gt)が奏でる魅惑的なフレーズが先導した「曼珠沙華」はNICOLASと悪童会(ファン)が決起する曲でもあり、その覇気がみるみるうちに躍動感となって表れたかと思えば、デジタルサウンドも相まって豪快にモッシュの波を起こした「VITAL SIGNS」と、NICOLASが持つあらゆる武器を繰り出しながら破天荒ぶりを発揮していく。

▲SAKU(Vo)

「今日はこう呼ばせてもらうぞ、KHIMAIRA! 何しに来た!? ライヴしに来たよな!? 好きにやれ!」とSAKU(Vo)が喝を入れると、ガツガツと攻めていく中にもメロディアスさを欠かさないNICOLASの強みを活かした「Delighted」や、SAKUがZERO(Ba)にマイクを向けるシーンも飛び出した「ブリリアントワールド」を続けてアッパーにのし上げた。

▲AKANE(Gt)

▲SATSUKI(Gt)

▲ZERO(Ba)

▲HAYATE(Dr)
しかし、NICOLASのライヴが圧巻だったと振り返る所以は、間違いなくラスト2曲で魅せたドラマチックさにあったと言っても過言ではない。まず披露したのは、「KHIMAIRAを刻み付けて帰りましょう。この曲を贈ります」と伝え、直前までの狂騒ぶりが嘘かのようにシンと静まり返る中で響かせたバラード「木漏れ日」。この楽曲も元はゴシップ時代の曲であり、時を経てNICOLASとして再録をした経緯があるのだが、ヴィジュアル系特有の良質なバラードを意識して生まれた曲だという制作時のエピソードがあったことも付け加えておきたい。先ほどまでテクニカルなギターソロを聞かせていたSATSUKI(Gt)もここではむせび泣くような音色を響かせ、春夏秋冬の表現を織り交ぜながら愛国心ゆえの雅やかさと儚さを巧みにステージへと反映していった。そして、最後にHAYATE(Dr)がドラムで彩りを添える粋な計らいに留まらず、そこへスローテンポのままバンドインする形でSAKUが「PERFECT FALL」へと繋ぐように歌い出したのである!

このスペシャルギミックに感服したのも束の間、本来の「PERFECT FALL」にあるデジタリックロックな強靭なサウンドを惜しみなくぶつけてラストを飾ったのだった。なお、「KHIMAIRA」発足時のトッパーを務めたのはNICOLASであり、記念すべき幕開け1曲目はこの「PERFECT FALL」でもあった。この日、完膚なきまでに「NICOLASとは?」を示すためのメニューを最高の形で見せつけたライヴは、確実に1年前よりもバンドが進化していることを物語るものでもあったことだろう。
未だに「Raphaelが現代に存在していたらどうだっただろう?」と、想像することがある。正直そこに答えは見いだせないのだが、1つだけ確実に言えることは、そう思うほどにRaphaelというバンドはヴィジュアル系シーンにおいて大いなる存在感を確立していたということだ。そして、孤高のヴォーカリスト・YUKIという存在が“歌”でそれを紡ぎ続けてくれていることも、忘れてはいけない。
「シナゴーグ前奏曲イ短調~第一楽章~」が流れる中サポート陣に続いてステージに表れたYUKIは、衣装や白塗りメイクの出立ちからして明確な“RaphaelのYUKI”の姿だった。

▲YUKI(Vo)
幕開けを飾った「花咲く命ある限り」のギターが弾き出すメタリックなフレーズを奏でているのは優(BugLug / Gt)で、その手にあったのはなんとRaphaelのギタリスト・華月の愛機・天馬幻想(ペガサスファンタジー)。さらに、YUKIの抜群な歌唱力を堪能しながら会場を縦に揺らした「さくら」と、次々と名曲たちが飛び出していく。

▲優(BugLug / Gt)

▲一樹(BugLug / Gt)

▲SAM(超ジャシー / Ba)

▲鴇(team-R / Mp)

▲風弥(DaizyStripper / Dr)

しかし、一度(ひとたび)話し始めると途端に笑いが絶えない朗らかな空気へとシフトさせるのもYUKIの得意技。この日出演したバンドたちに触れながら、「Affection、“愛情”というコンセプトだとお伺いして。旋律を介していろんなアーティストさんと、愛を交換していけたら」という言葉を前振りとして、ここからはコラボレーションなステージが繰り広げられた。まずは、kai(CHAQLA. / Gt)を招いて楽曲の壮大さが飽和した「Holy mission」。

そして、SATSUKI(NICOLAS / Gt)がギターソロも担当した「症状1. 潔癖症」。ここではSATSUKIも華月が使用していたギター(通称:青Jackson)を手に使用していたことから、ステージには“形見”のギターが2本揃うという奇跡が起こっていた。このタイミングで優は「俺も同じRaphaelのファンとしてこのギターをめちゃくちゃ大事にして、今日のライヴはYUKIさんのために一生懸命弾くのでよろしくお願いします!」と話し、SATSUKIもまた「まさかこんな日がくるとは思わなかったです。華月さんのギターを背負わせていただく重圧というか……とにかく楽しもうと思います!」と話していたが、Raphaelを愛する2人の手によって奏でられた“変わらぬ音”を耳にできたことは、純粋に感謝に等しい嬉しさでもあった。ここでオリジナル編成に戻り披露された「Sweet Romance」ではフロアのシンガロングも響き、ミュージシャンたちだけではなくファンも併せてここに集う誰もがRaphaelの音を一つ一つ大切に噛みしめていることを実感させた。

MCではRaphaelが活動していた90年代を例に挙げ、「今みたいにSNSもないし、あったのは2ちゃんくらい(笑)。その代わり雑誌がたくさんあったね。たくさんの情報に価値があって、確かな品質があった時代だよね。それらに変わってどんなメディアが今の時代、ヴィジュアルシーンを盛り上げてるか知ってる? ……VISUNAVI!」と話したシーンには拍手が起き、続けて「春の季節にちなんで、卒業の曲を歌わせてください」と再び演奏は「lost graduation」へ。

各曲がアレンジを施されてアップデートされている中で、冒頭の風弥(DaizyStripper / Dr)のドラムや鴇(team-R / Mp.)のピアノも相まって限りなくオリジナルに近い形で披露された「lost graduation」には、YUKI自身が抱くこの楽曲への敬意が表れていたようにも思う。そして、アドリブのフレーズでラストを締めくくった一樹(BugLug / Gt)に対してYUKIは、「勝手に運命感じちゃうよね。またこの時代にギタリスト“かずき”と共演できるなんて」と漏らした言葉も印象的だった。夢のような時間は早くも終盤へと差し掛かり、「駆け抜けようぜ!忘れないでね、みんな大好きだ!」と「夢より素敵な」をSAKU(NICOLAS)、巽(XANVALA)、ANNIE A(CHAQLA.)と共に歌いあげた。

これで大団円かと思われたが、「今ので終わりだと思ったでしょう?(笑)」としたり顔のYUKIが改めてラストとコールしたのは、70.(XANVALA)を迎えて披露した「症状3. XXX症」。ベースソロを70.とSAM(超ジャシー / Ba)が交互に弾き合うという、スペシャルバージョンでのエンディングとなった。

多様性という言葉をよく耳にする昨今だが、当時Raphaelは「個性とは何か?」ということにいち早く切り込み、少年少女たちに強い影響力のあるメッセージを放っていた。ラストに演奏された「症状3. XXX症」にも、自己の尊重ということが強く込められている。かつて癒しの天使たちが残してくれた、アナタがアナタらしくいるためのヒントは時代を越えてもなお光を与えてくれるのだと、YUKIをはじめ多くの人々の愛によって証明されたのだった。


歴史あるヴィジュアル系シーンの中で、まっすぐに音楽を通して自己表現に向き合うバンド・アーティストたちの生き様は、これからも人々へたくさんの影響を与え、与えられながら紡がれていく。そんなポリシーやプライドが美しくぶつかり合うことになるであろう、6月13~15日に“原点回帰”とこれまでの成果を問う“答え合わせ”の意を込めて池袋EDGE3を舞台に3デイズで開催を控えている「KHIMAIRA」にも、引き続き注目していただきたい。
取材・文:平井綾子
写真:A.Kawasaki
SET LIST
[CHAQLA.]
SE.開眼
1. POISON
2. 首魁の音
3. Libration-369
4. 極上なLOSER
5. ミスキャスト
6. PLAY BACK!!!
7. 蛍の光(パンクver.)
[XANVALA]
1. XANADU
2. Bamby
3. 本能
4. 鮮やかな猛毒
5. 終幕
6. 縷々
7. デスパレード
[NICOLAS]
1. 堕国
2. 曼珠沙華
3. VITAL SIGNS
4. Delighted
5. ブリリアントワールド
6. 木漏れ日
7. PERFECT FALL
[YUKI-Starring Raphael-]
SE. シナゴーグ前奏曲イ短調~第一楽章~
1. 花咲く命ある限り
2. さくら
3. Holy mission
4. 症状1. 潔癖症
5. Sweet Romance
6. lost graduation
7. 夢より素敵な
8. 症状3. XXX症
SE. up to tiptoe

-DAY 1-
KHIMAIRA-vol.7-
6月13日(金)池袋EDGE
OPEN 17:15 / START 17:45
メリー(SPECIAL GUEST)
Azavana
CHAQLA.
KAKUMAY
トリカブト(O.A)
…………………………………………
-DAY 2-
KHIMAIRA-vol.8-
6月14日(土)池袋EDGE
OPEN 16:00 / START 16:30
色々な十字架(トリ確定)
鐘ト銃声
umbrella
201号室
Z CLEAR
NETH PRIERE CAIN
…………………………………………
-DAY 3-
KHIMAIRA-vol.9-
6月15日(日)池袋EDGE
OPEN 16:00 / START 16:30
CHAQLA.
MAMA.
NICOLAS
まみれた
ヤミテラ
鮮血A子ちゃん(O.A)
…………………………………………
前売り¥5,000 / 未成年¥500 いずれもドリンク代別
最速先行抽選 3月22日(土)22:00~3月30日(日)23:59
https://eplus.jp/khimaira/

■バトルキマイラvol.2~MAMA.を喰わせろ!~
4月25日(金)
大塚Hearts +
OPEN 18:00 / START 18:30
MAMA.(標敵)
ティンカーベル初野
我楽多
DAMNED
前売り:一般 ¥4,500、未成年(18歳未満) ¥500 (税込)
当日券:未定(税込)・オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
一般発売中!!
https://eplus.jp/battlekhimaira/