【武瑠、Verde/、mitsu】4月4日下北沢シャングリラで開催される「咆哮SOLOIST」へ向けて一匹狼が集結!ソロだからこそ生まれるドラマの産声。
武瑠、Verde/、mitsuのソロアーティスト3者が揃い踏みするイベント「咆哮SOLOIST」が4月4日(金)に下北沢シャングリラで開催されることとなった。
このイベントを主導する武瑠はヴィジュアル系と言うジャンルに飽和を感じ独自性のある活動にシフトしている。
そんな彼が本インタビューで“ヴィジュアル系の可能性”について言及していることも興味深い。
Verde/名義での活動を始動したShou、そしてソロワークスとしての長いキャリアを誇るmitsu。何故ここに3人が集結したのか、それぞれの性格と感性が驚くほどスイングした鼎談をお届けする。
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ソロでもドラマは作れるんじゃないかな
────今回この3マンライヴ「咆哮SOLOIST」の発起人はどなたなのでしょうか?
武瑠:俺ですね。このイベントを開催するのにはいろんな理由があるんですけど、7年前SuGの活動を止めた時期にヴィジュアル系ってジャンルに自分がいる意味があんまり見いだせなくなっちゃったんですよ。実際SuGの後期からシーンでちょっと浮いてる存在になっていったし、いろんなしがらみとかも含めてジャンル内であまり関りたくないなって思ったんです。
────理由も気になるところですが、そこから武瑠さんはジャンルを飛び越えた活動にシフトされましたよね?
武瑠:そうですね。ヴィジュアル系の中で模倣が飽和してしまってきていて、そこに新たな刺激がなかったんです。結果、俺はこの世代のヴィジュアル系のなかでは一番いろんなジャンルとやってきたと思うんですよ。閉塞感への反動じゃないけどHIP HOPやクラブシーンにも出ていったし。でも、そこで発見もあって。
────と、言いますと?
武瑠:別に流行ってる音楽が必ずしもすごいわけじゃないなって感じたんです。たしかに流行ってるし、売れてるけど、音楽の素晴らしさで言ったら僕が初めてMUCCを観た時に感じたカッコよさに対して勝っているわけではなかったし。自由そうに見えるジャンルでもしがらみとか細かいルールがあって全然自由じゃなかった(笑)。隣の芝が羨ましく見えてたのかもしれないですね。
────外にでたことでヴィジュアル系の良さにも気づけたんですね。
武瑠:一概にってわけじゃないですけどね。最後の方はデザインや音含めて下品なパクリも多くて…ってつい最近もあったけど(笑)。でも、自分も先輩の影響を受けているのは事実だし、今だからこそフラットに見るとヴィジュアル系にも刺激をくれる新しい子が出てきたと思います。それこそ<KHIMAIRA>を観に行った時に出てたCHAQLA.とかMAMA.は良いですよね。CHAQLA.なんて完全に新しいことをやっているし、それが自分にも刺激になったんです。音楽へのアンテナの張り方もしっかり掘り下げてますしね。そういう経緯もあって改めて、今のヴィジュアル系は新しいことが始められるフィールドだなって感じました。でもこのジャンルでソロってまだムリゲーだって言われてると思うんですよ。だからこそソロで集まって、ここからまた新しいドラマを作れるようなイベントをやりたいって気持ちになったのが発端なんです。
────その中で今回はShouさんとmitsuさんに声がけするに至ったんですね。
武瑠:Shouさんは最初から大前提として考えてました。いろいろと相談にも乗ってもらってますし。そしてさらに今誰とやりたいかなと思って調べた時に出てきたmitsuくんのメイクやヴィジュアルを写真で見て悔しいって気持ちになったんです。素晴らしいって意味で。人の写真を見て悔しいって気持ちになるのなんて自分の活動初期ぐらいだったので。それこそゾロを見た時ぶりの感覚で。それでmitsuくんを僕の展示会に誘ったんですよ。
────そういう流れだったんですね。
mitsu:武瑠くんの展示会に誘ってもらって行きましたね。それまで深い交流があったわけではないけど、誘ってくれるのとか、なんか今そういうターンなんだなって嗅覚が働きました。お互い多分そういう流れがあった気がするよね?
武瑠:だと思うな。
mitsu:それで展示会に行ったらその日に今回の<咆哮SOLOIST>の話をいただいて、そこにShouさんも出るっていうところまで聞いていた感じですね。それはもう即答で是非!と。だから武瑠くんがどういう想いでこの3人でのイベントを考えたのかって理由は今初めて知っているところです(笑)。
────Shouさんの存在は最初から頭にあったんですか?
武瑠:<咆哮SOLOIST>って企画自体はだいぶ前に考えてたんですけど、それを久々に思い出して今度こそ実現しようってなった時にちょうどVerde/が始まったんです。<咆哮SOLOIST>は一匹狼の人が背中合わせで闘うっていうコンセプトで、バンド出身だけどソロで進んで行く人の掛け合わせにドラマティックさを感じてShouさんにお願いしましたね。
Shou:僕はmitsuのソロを立ち上がりから見てて、インテツくんからも「素晴らしいヴォーカリストだよ」って聞いてたんです。それでライヴ映像をいくつか観たけど、ちゃんとクオリティも高いし、売れそうな音楽をやってるのに、なかなか会場のキャパが上がっていかないのを目の当たりにして、ソロの厳しさを感じてましたね。伝わるまでに時間を要すると言いますか。
mitsu:そうですね。
Shou:それでも僕から見ても素晴らしいと思えるものだったし、今はちゃんとキャパシティも上がってますよね。ブレイクスルーするタイミングがあったんだろうけど、ただ、ソロって最初の数年は大変なんだろうなって思いました。
武瑠:シンプルにソロってムズいんですよね。
Shou:ムズい!
mitsu:圧倒的にムズいですね
Shou:俺もバンドが止まって、完全に裏方になるかって考えてましたもん。
武瑠:言ってましたもんね。
Shou:いろいろなものを天秤にかけて、改めて“歌いたい“っていう欲求が出てきて、その必要に迫られてやっと始まった状態なんだよね。
mitsu:そうなんですね。驚きです。でもわかる気がします。やるしかないからやる、みたいな。
Shou:0か1かって感じでしたね。100とは言えないけど、0じゃなくて1の方に賭けたって感じですね。
────おふたりは歌うっていうことに対してどうなんだろう?って疑問を抱いた時期はありました?
mitsu:う~ん、そうですね。迷う選択肢がなかったって言うのが正しいです。僕はこの3人の中で一番最初に解散してるし、自分はShouさん、武瑠くんと比べるとバンドとしてのステージはもう1個下だと思ってるんですね。だから周りと比べるってことではなかったんですけど、Shouさんが言うように自分も全部なくなってから決めようと思って、それでバンドがなくなったら本当落ちるところまで落ちてしまったんです。公言してるんですけど、鬱になって精神科通ったりとかして、自殺未遂もしたし、外に出れないような状況も増えていったんですよ。そんな絶望の中で“俺、死ぬのと歌うの天秤が同じなんだ”って思ったんですよね。ソロを始める前にある方が「お前、歌わずにいたら多分死ぬから歌った方がいいんじゃない?」って言ってくれて。それまでは解像度が低くて“夢がないと生きられない”って思ってたんですけど、その時に“歌がないと生きられない”ってことに気がついたんです。それでもソロっていうのは自分のやりたいことの真反対だったんで、絶対にやりたくないって感じだったけど。
武瑠:バンド入りだしね。
────ちなみに絶対やりたくなかった理由はなんですか?
mitsu:言葉を選ばず言うと、当時の自分にとってソロシンガーはカッコいいものではなかった。ソロってアートである美学を売りにして、解る人だけ解ればいいっていうものだと認識してて。あの頃の自分にとってはよくわかんないけど4人か5人が集まったバンドっていう集合体が持つとてつもないエネルギーみたいなものとは逆だと思ってたんですよ。洗練されて無駄な物が全部なくなって、その孤独と向き合っていく孤高のヒーローみたいなのがアーティストの印象だったので、ソロにはなんかミラクルがないと思ったんです。特に解散した後、当時の自分はメジャーデビューやキャパを上げていく…漠然と売れたいってことを目標にしていたので、自分の中の核がまだちゃんとなかったんですよね。だから、正直自分のような人間にソロが務まるとは思っていなかったって言うのもあったかもしれないです。初めはご祝儀感覚でバンド時代のファンもバンバン来てくれて、“あれ?なんか思ったよりもお金も入るしやっていけるわ”って思ったけど、2~3年目ぐらいで地獄がやってくるんですよ。1人で活動することってバンドと違って何から何まで自分でやらなきゃいけないから、わからないことも多いし、人もどんどん減っていくんです。ファンの子はもちろん、関わってた人も。それから2、3年経つと、逆に当初より全うに頑張れてるのに目の前から人が減っていくからどんどん何がいけないのか理由も見失ってくる。なかなか大変でしたね。
武瑠:なるほどね。
mitsu:なんで解ってくれないんだろう?って感覚で自分がどんどん疲弊していくし、それでも目標がないとついてきてくれないのも理解できるから背伸びしてたんですよね。例えば5年以内にバンドを解散した渋谷公会堂でワンマンやるとか。そういうのもコロナ禍で全部ぶっ壊れて。で、そこから5周年6周年越えてそうですね…6周年ぐらいでまた自殺未遂してるんですけど、7周年手前ぐらいから“あ、俺のやりたいことをやれる場所なんだ”っていうのに気づけて。
────ソロでも?
mitsu:うん。と言うかソロ“が”ですね。ソロって純度が100なのでバンドと違って自分のやりたいことを全て投影しようと思えばできるよねって。その方法が難しいだけで。キャパ上げとか闇雲に売れたいみたいなものではなく、自分のやりたいことだけをやり尽くす場所に変えようって3~4年前にスイッチが入って空気が変わったのは自分でもわかるからこそ、武瑠くんとかShouさんもそれまでと違う見方をしてくれるのかなって思います。
武瑠:乗り越えた人の雰囲気を感じたのかもしれないですね。
────一方Verde/はライヴを拝見していると、どんどんバンド然としてきているように思います。
武瑠:たしかに。
Shou:その辺はmitsuが初期に思ってたことに共感するかな。バンドのカッコよさも感じてるし、自分自身バンドの中のヴォーカリストが一番ハマるところだと思うので、Verde/はバンドっぽさを打ち出しているところはありますね。まだ何が自分に似合うのか探している最中でもあるんですけど。元々バンド時代は立ち上がりと事務所を出た瞬間は全部僕が仕切ってたんですよ。どんな曲を作ってどんなコンセプトとヴィジュアルで進めるかを。だから自分の作るコンテンツに自信はあるので、ソロになってこれまでやれなかったことを始めるって言うよりは、バンドの時と感覚は変わってないんですよね。
mitsu:再現するための方法はすごく難しいと思うんですけど、再現しきれるならソロが自分を一番出せるような気がします。ただ、全部自分でやらなくてはいけないし、折れそうになった時に肩を組んでくれる人はいないですからね。それに周りの火が消えないようにより引っ張っていかなきゃいけないし。安心してね!って言える自分でいなきゃいけないってことはヴォーカリストとしての力量がよりシビアに問われるんですよね。
武瑠:先導して自己発電していかなきゃいけないもんね。
────でも武瑠さんはそういう先導やハンドリングに長けている印象があります。
武瑠:得意って言うか、ただせっかちなだけかも(笑)。
Shou:あははは!(笑)。
武瑠:SuGの時からそうなんですけど、人からアイディアが出てくるのを待てない性格なので、自分からどんどん出しちゃうタイプですね。
────ご自身のやりたいことの純度はやはり今の方が高いですか?
武瑠:いや、俺そんなに変わらないですね。
mitsu:へー!
武瑠:SuGの時からメンバーが“武瑠のやりたいことがSuGの中心線だから”って信頼してやりたいようにやらせてくれたんで、あんまりそこでぶつかったこともなかったんですよ。あの5人だからやる意味があることをやろうとずっと思っていたので、本来の自分の趣味よりもかなりポップ目にはしてましたけど。SuGって結構意外で、俺だけ切ないのとかダーク系が好きで、ほかのメンバーはみんなポップスとか男の子っぽいロックが好きなんですよ。外から見たイメージ的には俺がポップなのやりたいと思われてるけど、本当はバラードとかの方が得意でした。みんなバラードやりたくない感じだったんであんまり選曲会にすら持っていってなかったですけど(笑)。「桜雨」がヒットしたときにレコード会社が“またバラードにしてくれ”って言ってきたけど、他の
みんなは“嫌だな…”って感じのノリだった(笑)。
────意外です。
武瑠:だからSuGの時に5人でやる意味のあることをちゃんと突き詰められてやり切ったからこそ、ソロはソロで1人でやる意味のあることに自然に取り組んでいる感覚です。ソロになったからやっと自分のやりたいことができた~ってことではないかな。
────武瑠さんはソロでさまざまな方とコラボレーションしているから、ある意味ではバンドマジック以上に多くの化学反応が起きているのかなと思うんですが、そのあたりはいかがでしょうか?
武瑠:数字としてのマジックはね…起こらないです(笑)。むしろそこはチャレンジしたいっていう純粋な自己満なんです。フィーチャリングが超流行ってるヒップホップとかのジャンルだと、もうそれが当然になってるんでお互い応援する文化なんですけど、バンドだとなかなかそういう共犯性は生まれないかなと思います。俺はそこに数字を求めるよりは、単純にその人をフィーチャリングしないとできない曲だから作ろうみたいな感じ。でも、このクオリティだったら化学反応もっと起きてもいいのになとは思います。ただ、みんながみんなクオリティに対してのファンじゃないんですよ。そこに纏わるドラマ性や人間模様を見ているからこそ今回みたいなイベントが生まれるんです。
mitsu:俺、武瑠くんのソロは勝手にずっと見てましたけど“あぁこの感じやってくれるんだ~”って思ってました。俺が先に武瑠くんみたいにできなかった理由は、これやるの相当勇気いるなって感じてたからで。
武瑠:怖いっスね(笑)。
mitsu:わかりやすく結果が出ない…多分そのことも武瑠くんは想定済だったと思うんです。で、正直に言葉を選ばずに言うと“あぁ、やっぱりお客さんにハマらないよね”ってなった。だからこそ、自分の道を突き進んでる人の信用度がとにかく高いんですよ。自分の考えが大きく変わったのもそのあたりで、バンドしかやったことがないってのもそれはそれで素敵なことなんですけど、ソロをやっている人ってミュージシャンとしての視野の広さが全然違うと思います。だから武瑠くんとは同じ角度で会話ができるだろうなってずっと思ってたんです。
武瑠:俺よく売れる気ないでしょ?って言われるんですけど、全然ありますからね(笑)。
▲武瑠
────これ私も同意見で、武瑠さんのステージってやりたいことが貫かれているから“売れる気ないだろ?”って思いましたし、そこの一匹狼っぷりに惹かれたんですけど、ジャンルとか隔たった考えを抜くとめちゃめちゃメインストリームなんですよね。空気感も含めて。
武瑠:それ嬉しい。今のファンは本当に理想的でめちゃくちゃいいんですよ。フロアの楽しんでる空気にもすごく自信があって、この感じで売れたら人生ベストだなとまで思う。そういう自信があるからこそ、もっと人がいる所にまた行こうって思えたのもありますね。このクオリティでダメだったらなんか逆に納得いくみたいな。これで無理だったらもう内容のせいじゃないから大丈夫だなみたいな。
Shou:いいね。
武瑠:サッカーとかバスケとかってバンドに近いと思うんですよ。メンバーとのドラマが可視化されているところが。でも個人戦の格闘技にもドラマってあるじゃないですか?だからソロでもドラマは作れるんじゃないかなって思います。
mitsu:自分はバンドドリームに依存してた部分が大きかったんだけど、10年やって気がついたのは、自分はバンドがやりたいんじゃなくて、好きなヤツらと好きなことがしたいだけってこと。たまたまその名刺がバンドだっただけなんですよね。
武瑠:そうだと思う。
mitsu:やりたいことと数字を天秤にかけた時にどっちが理想なのかは誰でも考えるし、キャパを上げるためにやりたくないことをした経験が僕にもおふたりにもあるはずなんですよ。でも、その経験をしたうえでソロをやってるってことは、数字を必要としない瞬間があるんだろうなって自信になります。僕も自分の純度が100に近づいてる分、ファンのことが凄く大好きなんですよ。
────ShouさんもVerde/としてアルバムリリースやツアーも行ってきましたがそういう心境の変化ありました?
Shou:まだファンがバンドを期待して来てくれている感じもあるので、まだまだ僕のソロの楽曲に完全に惚れさせないといけないなって状態です。2人とはソロのキャリアが全然違うので。
mitsu:時間も絶対必要ですよね。自分もν [NEU]のイメージを変えていくまでに3年以上はかかった気がします。
Shou:そうだね。だから、ソロ1年目でもフルアルバムを作ってなかなかハードだったけど、今年も負けないぐらいやろうと思ってる。
mitsu:すごーい。
武瑠:今年はちょっと減らすとか言ってたのに(笑)。
Shou:年末年始で6~7曲は原形を作った(笑)。
武瑠:素晴らしいですね。
mitsu:おふたりとの決定的な違いはここです(笑)。ペース早すぎ!
武瑠:でもさ、変な話自分ですげーなってたまに思いません?百何十曲とか作った後で、またソロでも作れるのかよって(笑)。
Shou:あははは!(笑)。
mitsu:俺、絶対無理!10年やってきて20何曲しかないもん。
武瑠:たまに自分で何やってんだろうって思う(笑)。
────Shouさんはバンドとソロで変わりがないって仰ってましたけど、今後変えていこうと思っている部分はあるんですか?
Shou:バンドの後期は退廃的な世界観が強かったと思うんですけど、僕自身もともとは子どもが聴いてもわかるようなポップなものが好きで…任天堂的な。
mitsu:意外です!
武瑠:絶対FF(ファイナルファンタジー)っぽいのに。
Shou:キャッチーさに美学はあって、歌詞もスッと入ってきて届きやすいものをやっていきたいなと思ってます。ソロ1年目もそういうことを考えてやってきたんですけど、結構メロディが複雑過ぎましたね(笑)。この3人の中でキャリアでは僕が最も長いですけど、ソロだと歴が短いので胸を借りるつもりでやりたいと思います。
武瑠・mitsu:いやいやいやいや!