【Petit Brabancon】ライヴレポート◆<CROSS COUNTER -01->2025年3月8日(土)名古屋THE BOTTOM LINE◆狂乱のツアー初日!

昨夏に発表した2nd EP『Seven Garbage Born of Hatred』では、ジャパニーズ・ハードコアとインダストリアル・コア、
そしてサイバーパンクの世界観を混濁させたサウンドで、さらなる暴音を提示したPetit Brabancon。
リリース直後にはツアーも行なわれているが、同ツアーの最終地である名古屋を皮切りに、2025年最初の公演《CROSS COUNTER -01-》がスタート。
本稿ではその狂乱の初日の模様をお伝えしたい!
初日公演となったのは、同地を代表する名門ライヴハウス[THE BOTTOM LINE](※前ツアーの最終会場は[DIAMOND HALL])。
そして、ここでの共演者として声をかけたのが、ROTTENGRAFFTYだ。
彼らはプチブラ初の対バン相手であり、ファンの垣根を壊していった重要な存在でもある。
また京とロットンのフロントマンであるNOBUYAとN∀OKIはともに京都府出身という共通点があり、
さらに東京発となるプチブラと京都のロットンとがその中心点とも言える名古屋にて対バンを行なうのであるから、
この公演はライヴシリーズ初日という以上の意味を持った夜になったと言えるだろう。
会場に集まったファンもそれぞれのバンドTシャツを着込み、“動ける出で立ち”でスタンバイ済みだ。
先陣を切るロットンのステージは、「PLAYBACK」で始まった。初っ端からツイン・ヴォーカルがまくし立てまくる、強烈なタテノリ・チューンだ。
コード&リフで責め立てるMASAHIKOのギター、低音をグイグイと押し付けてくる侑威地のベースの圧も、最初から強烈!
両バンドのファンが入り交じるフロアからは、大きな歓声と手拍子が飛ぶ。バンドはすかさず2曲目「秋桜」に突入。
当日の時点では最新既発アルバムに当たる7th『HELLO』収録の、スピード感満載の一曲。突進するHIROSHIのドラムがファンをさらに煽っていく。
そしてフロアには、早くもクラウド・サーフが発生! サーファーに男女の差はなく、次々とステージ前に向かって転がり進んでいく。
そしてそこにはプチブラのTシャツを着たファンも多く含まれており、そのあたりからも両バンドの親和性の高さとともに、
プチブラ・ファンのパンク/コア系ライヴへの高い順応性も感じられる。
この光景こそ、プチブラ・メンバーが結成当時から目論んでいたひとつの形なのではないだろうか。
NOBUYAの“ロットンTシャツのヤツ、プチブラTシャツのヤツに負けるな!”というセリフからも、どちらのファンも一様に熱狂していたことがわかるだろう。


「D.A.N.C.E.」や「THIS WORLD」など定番人気曲、当3月に発売される最新8thアルバム『わびさび』からサワリが披露された「・・・・・マニュアル07」などロットンの勢いが止むことはなく、会場に熱気と蒸気を溜め込んでいく。ヴォーカルに導かれオーディエンスも一緒に歌った「金色グラフティー」、そして爆走チューンである「暁アイデンティティ」にて、彼らのステージは幕となった。
ステージングでのエナジーとは対象的に、楽曲が終わった瞬間にひと言もなくステージ袖へと消えていくメンバー。
このコントラストも、年間100本近いショウを行なっているライヴ・バンドならではのカッコよさだ。
どちらのバンドのご贔屓に関係なく、会場に集まったすべてのオーディエンスが十二分に汗をかいていたことだろう。
これこそ、対バンの醍醐味だ。セット・チェンジのために張られた黒幕の前では、モクモクと湯気が立ち昇る。


その熱が冷めるよりも早く場内は暗転し、openingが鳴り始める。『Seven Garbage Born of Hatred』の1曲目でもあるyukihiro作曲のインストゥルメンタル・ナンバー「move」だ。
ファンの手拍子に合わせて、ひとりひとりメンバーが登壇。最後に現われた京の目が、まだ暗いステージでギラリと光る。このキリキリとした威圧感がたまらない!
そして「move」が止まり、一瞬の静寂を挟み、antzの単音リフが繰り出される。「dub driving」がプチブラのショウの開幕を告げる!
これは『Seven Garbage Born of Hatred』と同様の流れであり、もちろんそれを知っているフロアでは、イントロから早くもサーフが起こる。
先の話とは逆にそこここでロットンTシャツの姿も多く見受けられ、やはりどちらのバンドも楽しんでやろうという、両ファンの“ライヴ偏差値”の高さが感じられた。
いや、そんな頭でっかちな話ではなく、純粋に強烈な音楽に体が勝手に反応したということなのかもしれない。
ともかく、ロットンからバトンタッチされたエナジーは、1曲目から早くも爆発したということだ。
やはり京の存在感はすさまじく、スクリーム&グロウルを吐き出しながら最前鉄柵ギリギリまで詰め寄り、眼前のファンを威圧していく。
ラフな出で立ちとも相まった、プチブラでしか観ることのできない彼の姿と言えるだろう。

続くのは「Don’t forget」。ドラムンベース的同期に合わせて“オイ! オイ!”という歓声が上がり、ミヤ、antzの強烈なリフ・ワークが炸裂する。
7弦ギターならではの低音とハリの強さは、ロットンでの6弦ロー・チューニングとはまた違ったパワーと魅力がある。
決して大きなステージではなく、また足下にはそれぞれ大きなエフェクター・ボードが配置されているが、ふたりは左右で入れ替わるなど、ステージングでもファンを魅了していく。
このあたりは、それぞれ主体とするバンドにて培われたものだろう。
高松浩史のベースに誘われて「Ruin of Existence」が始まると、フロアでもかけ声と手拍子が起こる。
攻撃的なギター・ワークに対して、高松のベースは丸めの太いドライブ・トーンに聴こえるが、ベースが大きい波を作ることでタイトでありながらとてもグルーヴィな楽曲になる。
京のグロウルに合わせて、ギターふたりもギャング・ヴォーカルをとるのだが、これらが合わさると不思議とダンサブルなニュアンスも出てくるから面妖だ。

このように冒頭から猛烈な楽曲を繰り広げるプチブラだが、フロント陣を操っているのが、実はドラムのyukihiroであったりもする。
ロー感バリバリのコア系にあって、決してパワー・ヒッターではない彼。だが多彩なドラミングによって、ややもすると一辺倒になりやすいパンキッシュな音楽に表情をつけ、それでいて、とてもタイトに聴かせてくれる。
「Pull the trigger」ヴァースのハネ感や「Mickey」のシャッフル・フィールなどのリズム的な味付けは、バンドの楽曲の幅を音楽的に大きく広げていくものだ。
演出での幅という意味では楽曲とはまた別の、ギター・インプロヴィゼーションもそのひとつ。
2本のギターとベースが主となるセクションで、ミヤとantzがエフェクティブなサウンドを思い思いに鳴らしていく。
このあたりはノイズ/シューゲイザー的でもあり、背後から当てられる青白いライトに映るシルエットは、異世界の模様を作り出しているようだ。
やはりハードコアだけではないプチブラのスタイルがよく出ている。
そんなインタールードから始まったのは、地を這うようなグルーヴを持つ「非人間、独白に在らず」。
ヘヴィな楽曲が並ぶセットのなかで、それでもそれまでになかったような重々しい曲調で、自らの首元に手を押しやる京の絶叫は苦悶に満ちていく。
ファンもそのサークル・リズムに合わせてぐらりぐらりと首を振っている。
会場のサイズ感やストロボ照明の効果もあって、怪しいテント小屋で観る奇異・先鋭な視聴覚芸術とも表現できそうな様相だ。
以前ミヤは“90年代のライヴハウスは何が起こっているのかわからない怖さがあって、それがバンドのカッコよさでもあった”という旨の発言をしていたが、プチブラのライヴは、本当に入ってみないことには体感できない無二の世界が広がっている!

その後もカオティックなショウは進み続け、ベースのグリスが唸るトラッドな大グルーヴからツイン・ギターによるリード・ワークなど、プチブラだからこそのヘヴィなアプローチを刻印した楽曲が次々と披露されていく。客席のボルテージも落ちることはなく、ハードコアでありつつUKパンクなニュアンスもあり、
スウィングのダーティなカッコよさも持つ「Mickey」では、さらに多くのオーディエンスがサーフしていったのだった。
『Seven Garbage Born of Hatred』ではアルバムのラスト楽曲として配置され、MVやメイキング動画も作成された「Vendetta」も、その重要度に違わぬライヴでのハイライト・シーンのひとつだった。
低音リフはある意味ストレートで、ドラムが倍テンになるセクションも入ったジャパニーズ・ハードコア&ゴアらしい苛烈なナンバーだ。
プレイに合わせて無数の手が四方八方から京に伸びていき、それを彼が上から睨みつける。
同曲ラストにて弦楽器3人がドラムに集まりかき混ぜを始めると、そこでやっと京はニヤッとニヒルな笑みをたたえたのだった。
ほぼノンストップで発射されていったプチブラのセット。当日すべての楽曲の演奏が終わると、京、yukihiroはステージを降り、
ミヤとantzはそれぞれの足下でディレイのノブをイジり発振をさせ、その上で高松もベースをスライドさせていく。
そして音を残したまま壇上は空となったのだった……。
最後まで混沌としたステージを見せてくれた彼ら。肉体的には常時ハードでありながら、視覚的・音楽的には実験的でもあったPetit Brabanconの最新形。
スタジオ音源だけでは得ることのできない生の衝撃がそこにはあり、これこそが恐る恐るもライヴに参加しなければわからない世界なのだ。
確かに万人に迎えられるスタイルではないかもしれないが、ライヴに非日常を求めるのであれば、その扉を開けるべきもの。
こののちもライヴシリーズは続き、また対バン相手も変わってくるので、その影響は彼らにも及ぶことだろう。
きっと同じステージは二度と起こらない。Petit Brabanconのライヴとはそういうものなのだと感じた名古屋の夜なのであった。

文:岡見高秀
写真:
<ROTTENGRAFFTY> Yukihide "JON…" Takimoto
<Petit Brabancon> 河本悠貴、Yukihide "JON…" Takimoto
LIVE
■Petit Brabancon CROSS COUNTER -01-
2025年3月20日(木・祝)大阪・心斎橋 BIGCAT open 17:15 / start 18:00 Guest :SPARK!!SOUND!!SHOW!!
2025年3月21日(金)大阪・心斎橋 BIGCAT open 18:15 / start 19:00 Petit Brabancon Only
2025年3月26日(水)東京・恵比寿 LIQUIDROOM open 18:15 / start 19:00 Guest : The BONEZ ※SOLD OUT
2025年3月27日(木)東京・恵比寿 LIQUIDROOM open 18:15 / start 19:00 Petit Brabancon Only ※SOLD OUT
【チケット料金】
一般スタンディング : 6,500円(税込・整理番号付・D代別)
一般スタンディング(オリジナルTシャツ付): 10,000円(税込・整理番号付・D代別)
U-30スタンディング : 5,000円(税込・整理番号付・D代別)(※3月20日(祝)大阪公演・3月26日(水)東京公演のみ)
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