【SUGIZO】ライヴレポート<SUGIZO GIG 2025 REMEMBER, WHERE IS YOUR SUPER LOVE?>

3月23日(日)、EX THEATER ROPPONGIにて、SUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN/THE LAST ROCKSTARS/SHAG)がソロライヴを開催した。ゲストに迎えたのは、手越祐也、MORRIE (DEAD END/CREATURE CREATURE/GODLAND)、ミヤ(MUCC/Petit Brabancon)、Watusi(COLDFEET)という、ジャンルで括ることが到底不可能かつ豪華な顔ぶれ。SUGIZOが率いるのは、Chloe(Vo)、MaZDA(Syn)、よしうらけんじ(Per)、komaki(Dr)、ZAKROCK(VJ)からなるCOSMIC DANCE SEXTET。このバンド編成で単独公演を行なうのは、去年のクリスマスイヴでのファンクラブ会員限定イベントを除くと、2023年にウクライナの国民的バンドKAZKAと共演を果たした『SUGIZO TOUR 2023 Rest in Peace & Fly Away~And The New Chaos is Saving You~』以来、約1年半ぶりのことだった。

SEに乗せて順にメンバーが登場し、SUGIZOが姿を現すとひときわ歓声が大きくなり、右手を高く挙げたのを合図に音がピタリと止まった。静けさの中爪弾き始めた1曲目「Nova Terra」のピュアなギターの音色は、背後で映し出される屋久島の森の映像とリンクして、零れ落ちる清らかな水滴を想起させる。滝の水飛沫が霧のように白く広がっていく映像と、よしうらの神楽鈴の音色が心地良くシンクロ。序盤から深遠なアンビエントミュージックによって、心の深層へと働き掛けていった。

「今日はありがとう。『SUGIZO GIG 2025 REMEMBER, WHERE IS YOUR SUPER LOVE?』が始まります。最後までアゲアゲで行くので最幸の昇天をしましょう」(SUGIZO)と短く挨拶し、メンバー紹介に続き、ここでChloeを呼び込み。「DO-FUNK DANCE」が始まると、アンビエントな世界から一変、明滅するライトとレーザーが織り成す極彩色の世界へと切り替わった。SUGIZOは袴のようなシルエットのワイドパンツで大きく脚を開き、デヴィッド・ボウイを彷彿とされるポーズで鋭利なカッティングリフを刻み、ギターソロでは対照的に、堰を切った奔流のようなサスティーンを響かせる。COSMIC DANCE SEXTETの演奏の呼吸感が強烈なグルーヴを生み、音がピタリと止まる瞬間、照明やレーザーの動きも止まり、その繰り返しが高揚感を生んでいく。Chloeの高く果てしなく昇っていくような歌声は、彼女の内側から出ているだけでなく、ステージで渦巻くエネルギーの化身かのように感じられた。

Chloeを送り出し、以降インストゥルメンタルの曲が続いていく。逆光に照らされて「FINALOF THE MESSIAH」が始まると、SUGIZOは自らクラップを誘い、センターで仁王立ち。ギターを掻き鳴らした後、左脚を横に伸ばし低く腰を下げた体勢を取ると、フロアからは歓声が飛んだ。演奏は言うまでもなく、ステージを動き回りながら見せる、隅々まで意識の行き渡った身のこなしは、どの瞬間を切り取ってもTHE SUGIZO。と魅入られていると、この曲をBGMにSUGIZO本人が出演した天下一品のCMが唐突に映し出された。SUGIZOは「観て!」と言わんばかりにスクリーンを指さしている。このようなエンターテインメント性の高い演出を、FC会員限定イベント以外でも盛り込んだことに驚いたが、SUGIZOのポジティヴな意識変化を窺わせた。「NO MORE NUKES PLAY THE GUITAR」へ切り替わると、反骨精神を感じさせるロックンロールなリフを伸びやかに奏で、掻き混ぜるように円を描く手の動きで滑らかなカッティングを刻んでいく。核のはびこる世界の現状を映し出すシリアスな映像と、ほころんでいく花の蕾の映像とを対比させながら、内なる憤怒を表象するように昂っていくkomakiのドラミング。ラスト、「NO WAR」の文字が大きく映し出されると同時に音楽が止むと、大きな拍手が起きる。多くを語らなくとも、そのメッセージは観る者の脳裏に焼き付けられたに違いない。

赤色で彩られる激情のイメージから一変して、「NEO COSMOSCAPE」からは青色を基調とした照明やレーザーが似つかわしい、宇宙や海を思わせる幻想世界へと移行していった。SUGIZOは、前へ出てジャンベをプレイするよしうらと入れ替わりに後方でパーカッションを打ち鳴らしたり、ライトセーバーのような剣状のリボンコントローラーを手に、モジュラーシンセサイザーを操ったりと、あらゆるツールを駆使して音楽の悦びを体現していく。「ARC MOON」では、再び招き入れたChloeと時に寄り添うようにギターを奏でたSUGIZO。背後の映像はイルカが泳ぐ海から、やがて月に変わった。海のイメージを引き継いで「FATIMA」が始まると、SUGIZOはヴァイオリンに持ち替えて、愁いを帯びた美しい主旋律を艶やかに演奏。SUGIZOはくるりと背を向け、海にオーバーラップして投影された人魚姫のようなベリーダンサーの映像と対面し、シンクロして踊るように身体を揺らした。音楽と映像、照明が高次で融合する、SUGIZOのライヴならではの三位一体。忘れ難い夢のように印象的なイメージの断片が、次々とステージ上で繰り出されていく。

余韻が覚めやらぬ中、SUGIZOは「皆、楽しんでもらっていますか? いい夜だね。最後まで一緒にトリップするよ?」と呼び掛け、最初のゲストとしてWatusiを呼び込み、「25年来の友だちであり大先輩」と紹介。Chloeも再び加わり、「1997年から歌い続けているこの曲を行きましょう」(SUGIZO)との言葉から「DELIVER…」を披露。SUGIZOはChloeとのツインボーカルで、気怠く甘い魅惑のボサノヴァを弾き語り、曲中Watusiの立ち位置へ近付いていき向き合ってプレイ。二人の鳴らす音と音とが絡み合い、グルーヴィなうねりを生んでいく。Watusiのベースは音が太く艶っぽく、時に打楽器のようにアタッキーに弦をはじくのも印象的。続く「KANON」での演奏も素晴らしく、両脚をグッと踏みしめ全身で音を鳴らし、心地良さそうに揺れながら曲を支えていた。Chloeのソウルフルな歌声は、この曲のポテンシャルを最大限に引き出し、SUGIZOはナイトのように跪いてChloeを仰ぎ見ながらギターを演奏。生命力に満ちたパフォーマンスだった。

komakiとよしうらによるドラム&パーカッションのセッションソロを経て、再登場したSUGIZOは、「さて、これから初めての試みをさせていただきましょう」とユーモラスに切り出し、SUGIZOのライヴとしては極めて珍しいコール&レスポンスのレクチャーコーナーへ。次に披露するのはこのライヴの肝となる「SUPER LOVE 2024」だと明かし、「是非、今日のメインアクトを盛り上げていただきたい」と協力を呼び掛けて、サビのハンドクラップの鳴らし方を自ら説明。Chloeが見本を示し練習すると、綺麗に揃ったリズムで鳴らされるクラップ音。「すごいよ、SOUL‘S MATEの皆さん」とSUGIZOはファンの覚えの早さを褒め、想定より早く本番へ。背後には公開されたばかりのミュージックビデオが映し出される中、多幸感と一体感に満ちたパフォーマンスとなった。

次にSUGIZOが「皆さまお待ちかね、手越祐也」と招き入れると、「どうも、手越祐也です。よろしくお願いします」(手越)と第一声。TAKURO(GLAY)が作詞、SUGIZOが作曲した「Daniela」(アルバム『ONENESS』に収録)のカバーをまずは披露した。高音のサビ始まりをものともしない、真っ直ぐなよく通る美声。ドラマティックで複雑な展開をやすやすとこなしていき、SUGIZOはコーラスでも寄り添っていく。互いに向き合ったり、背中合わせになったりと絡み合う二人。SUGIZOのギターソロでは、手越が激しく頭を振ってノッていた。最後のロングトーンを高らかに歌い終えた時、力を振り絞るように仰け反った体勢になった手越にSUGIZOが近付いて、SUGIZOはギターのボディーを顔の高さまで掲げて掻き毟った。最後はハグし合った後、「素晴らしいシンガーなんです」と改めて手越を絶賛したSUGIZOに、手越は「ありがとうございます」と感謝を述べる。SUGIZOは「去年苫小牧(『TOMAKOMAI MIRAI FEST 2024』)で共演して、彼のポテンシャルにノックアウトされて。是非またご一緒したい、とラブコールさせていただきました」と手越にオファーした経緯を明かし、「新世代の超絶シンガー」と褒め称えて自身のファンであるSOUL‘S MATEへおススメすると、その後「そして“HONEYYY”の皆さん、SUGIZOをよろしく」と呼び掛けた。

続いてもう一曲はLUNA SEAの「I for You」。SUGIZOの掻き鳴らすCのコードで始まるのは原曲と変わらないが、エレクトロニックな味付けを施した特別なアレンジだった。劇的な転調を経て、エモーショナルにラストへと向かっていく歌唱では、手越の表現力がいかんなく発揮されていく。屈み込むような体勢でシャウトした最後の一声まで、オーディエンスは誰のファンという垣根を超え、じっと聴き入っている様子だった。「どうもありがとう、最高でした。皆どうもありがとう!」と手越は繰り返し感謝を述べ、ステージを後にした。

続いて、スクリーンに十字架が浮かび上がる中、「尊敬してやまない人です。Mr.MORRIE」(SUGIZO)との紹介を受けて登場したMORRIE、「長い付き合いのギタリスト仲間」と紹介されたミヤ(MUCC)。Chloeをコーラスに迎え、披露したのは「光の涯」だった。後にアイナ・ジ・エンドによるカバーが『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』のエンディング曲となり、SUGIZOのアルバム『愛と調和』に収めらることになるが、その原曲がアルバム『ONENESS M』に収録された“feat. MORRIE”ヴァージョンである。SUGIZOとミヤが奏でるアコースティックギターの音色が、幾重もの光の輪を紡ぐように重なって響きを増幅させていく。真ん中に立つMORRIEは、宇宙全体を抱擁するような穏やかな達観と、慈愛に満ちた温かな歌声で、場内を包み込んでいく。スクリーンに映し出されるのは、まさに“光の涯”とはこのような場所だろうか?と思わせる天界のイメージ。終盤のSUGIZOのヴァイオリン演奏は、鎮魂と祝福の調べ。肉体の死による悲しみを超えた、永遠の魂の存在を想像させてくれるような、もはやパフォーマンスという域を超えた神聖なひと時だった。

SUGIZOが「MORRIEさん、本当にありがとうございます。よくMORRIEさんのイベントには出ているんですが、出ていただくのは初めて」と語ると、「ついに呼んでもらって」とMORRIE。ミヤは、SUGIZOと共演するのはX JAPANのステージ以来だと振り返った。デビュー27年というベテランでありながら、先輩との共演ではロックキッズに戻ってしまうようだった。「上がいなくならないので」と、活躍し続ける先輩の存在に言及したミヤに、MORRIEは「早く引退します(笑)」と冗談めかして答え、ミヤが「いやいや…!」と焦る場面も微笑ましかった。SUGIZOは「MORRIEさんには100歳まで続けていただいて。僕はその時95ですから」と笑った。最後に、MORRIEのタイトルコールで披露したのは、「SO SWEET SO LONELY」。亡きYOUこと足立祐二が作曲したDEAD ENDの1989年のシングルであり、『愛と調和』でのカバーで鎮魂の意を捧げている。SUGIZOはYOUの遺したギターを奏で、MORRIEは「光の涯」とはまた違った佇まいで、頭を振ってリズムを取りながらエモーショナルに歌唱した。光や白い羽根のイメージが映し出されていたスクリーンは、やがて教会のステンドグラスに移り変わっていく。この日、この顔ぶれが揃って奏でたこの曲は、旅立ちのその先にある“生の祝福”として胸に響いた。

アンコール、SUGIZOは一人ステージに立つと「僕のライヴは、基本はインストゥルメンタルだしサイケデリックだけど、ゲストの皆さんを呼びやすい形態でもある。これからも様々なアーティストの皆さんをお呼びして、レアな体験をつくっていきたいので、よろしくお願いします」と挨拶。「今から5分間しゃべるから」と予告して観客に着席を促し、詳しく語っていった告知内容の数々は、まさにジャンルレス。音楽の回路を通じて、映画、歌舞伎、フィギュアスケートの世界と融合を果たし、創作し続けているSUGIZOのバイタリティーとクリエイティヴィティに驚嘆せざるを得なかった。


アンコールは2曲、「禊」と「TELL ME WHY?」をCOSMIC DANCE SEXTETで届けると、最後はゲストを再び招き入れ、握手とハグをそれぞれと交わし、「素晴らしい夜をありがとう!」と感謝を述べたSUGIZO。メッセージ性の強い楽曲を届けるにも、直接的な怒りの発露というよりも、エンターテインメント性をバランス良く織り交ぜた全体の構成、見せ方によって“結果的に広く伝わること”を重視した印象を受けるライヴだった。楽曲の音楽性も、バンドメンバーも、参加したゲストの布陣も、終盤の5分間の怒涛の告知内容にも、SUGIZOの活動にはどこにも境界線が見当たらない。分断ではなく融和することで辿り着く平和のイメージを、より高い次元で体現したライヴになったのではないか? 次なるステージへとSUGIZOが飛翔した起点として記憶すべき、意義深い一夜だった。
Text by 大前多恵
Photo by Keiko Tanabe
SET LIST
▼「SUGIZO GIG 2025 REMEMBER, WHERE IS YOUR SUPER LOVE?」
1 Nova Terra
2 DO-FUNK DANCE
3 FINAL OF THE MESSIAH
4 NO MORE NUKES PLAY THE GUITAR
5 NEO COSMOSCAPE
6 ARC MOON
7 FATIMA
8 DELIVER... / Guest:Watusi
9 KANON / Guest:Watusi
Dr.&Per. Solo
10 SUPER LOVE 2024 / Guest:Watusi
11 Daniela / Guest:手越祐也
12 I for You / Guest:手越祐也
13 光の涯 / Guest:MORRIE&ミヤ
14 SO SWEET SO LONELY / Guest:MORRIE&ミヤ
EN1 禊
EN2 TELL ME WHY?