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【nurié・廣瀬彩人】5周年ワンマンへ向かう最新の“変化”と未来を語る。
7月29日に結成5周年のアニヴァーサリーワンマン< nurié 5th Anniversary ONEMAN 「5 years, 5colors」 >を開催するnurié。その公演タイトル通り多岐に渡る色彩の楽曲をその季節ごとに提示してきたバンドのコンポーザーでもある廣瀬彩人に節目を迎える心境を訊いた。その自在に引き出されるサウンドメイクの一方で、共存する葛藤も生じた。悩みながら着実に歩を進めるバンドの最新の到達地に何が広がるのか。
今は初期の感覚に近づいているのかも知れない。
廣瀬:僕ね、パーソナルインタビューとか初めてなんですよ。
────7月29日のVeats SHIBUYAワンマンに向けて本音で語っていただこうという企画です(笑)
廣瀬:いや、怖いな(笑)
────まず、最新のnuriéの状態から洗っていきたいと思うんですけど、先日拝見させていただいた6月10日渋谷REXでの主催ライヴ<OVERKILL>が実に素晴らしかったじゃないですか。
廣瀬:ありがとうございます。自分ら的にはリハと本番前がトラブル続きやって、本番どうなるかなって不安だったんですけど。割とnuriéってトラブルがある時に限って良いライヴする傾向もあって、あの日もまさにそんな感じでしたね。セットリストも自分らの中で掴めたと言うか、“攻めてから魅せる”っていうのが今のnuriéに合ってるスタンスなのかなっていうのが発見出来ましたね。
────彩人さんのSNSでは、これまで楽曲やアレンジについて発信されることはあったと思うんですけど、インスタグラムではライヴのあり方について具体的明言されていたのが非常に珍しいな感じました。実際、あの日に新たなスタイルを掴んだ感触があった。
廣瀬:どうなんやろ。どうなんですかね…徐々に自分らの魅せ方がわかってきた気はしてますね。序盤にアッパーな曲で温めてから、nuriéらしい深い世界に引き込んでいくのがええんやろなとは思いました。でも、そういうセットリストを組んだとしても、実際やってみてその日その時で違うものにもなるので。自分らのテンション感とかも込みで。だから、新しいスタイルが一つ増えたっていうイメージですかね。
────あの日を境に彩人さんもランニングを始めましたよね。nurié と言えばヴォーカルの龍太朗さんがずっとランニングを継続している印象でしたが、彩人さんもついに。
廣瀬:ランニング始めた理由自体もREXのセットリストに対して手応えを感じつつも、自分の体力じゃもたないなと思って(笑)どんなライヴにも課題は残るじゃないですか?それは魅せ方やサウンド面ももちろんなんですけど、あの日の手応えを経て、課題がフィジカル面に及んだ感じですね。
────今までnuriéのキャリアの中でそう思ったことって特になかったわけですよね。
廣瀬:そうですね。でも言うて、これまでも攻撃的なライヴはしてきたんで、最近の自分の課題がより明確になったんでしょうね。具体的に目標立てないといけないなと。だから体力が落ちたから走ってるわけじゃなくて、目指すステージングにはサウンドだけじゃなくてフィジカルも必要やって具体化したってことだと思います。メンバーとミーティングしていても感じるんですけど、以前から目標はあったけど、どこか漠然としてたんです。でも、それが最近は明確に目標を立ててやるようになった。目標が明確だから、遂行するための課題も当然そうなる。
────バンドの年数を重ねて前へ進むことでぼんやりとしていた景色がはっきりと見えてきたと。ところで、抱いていた課題はどんなところですか?nuriéとして。
廣瀬:いや、nuriéとしてというか、どっちかっていうと僕個人の課題ですかね。昔って楽曲に寄り添えればいいんだっていうのをなんか変な意味で捉えちゃったのかなって。もっとプレーヤーとしてガツガツ行かないといけない部分があるのに、ヴォーカルや歌を立てたいから、出すぎないようにちょっと後ろ重心になってましたね。もっと自分を出さないといけない場所なのに、そのチョイスを拒んでいる自分もいて、でもそれはある意味で自分が疎かにしてきた思考なのかなとも今思うんです。もっと自分本位で良いんじゃないかって言うのはバンド単位でも話をして。
────彩人さんはコンポーザーの立場もあって、バンドを一番俯瞰して見ている方なのかなという印象があるんです。一方、外側から見ているとnuriéのライヴは昨年からずっと模索しているような印象があったのも事実で。大阪人らしいコミカルなMCを導入にして初見の人取り入れようとする試みもありました。
廣瀬:そのコミカルなイメージとかは自分の中でアリですけどね。 でも、さっき仰っていただいた通り、現状で言うと、“攻めてから魅せる”っていうのが今の自分たちの正解かなと思います。模索…そうですね、ずっと探してますねこのバンドは。
────言ってしまうとnuriéは場所を選ぶバンドでもあるじゃないですか。強みと弱みが表裏一体で共存しているというか。武器が多彩であるが故に、逆にどのチョイスをするかで一期一会の対バンライヴの場面で、出会った人のタイミング次第で印象が左右される。
廣瀬:そうですね。届けたいものは一貫してるんですけど、じゃあそれをどうやってしっかり届ける?って言うところのアプローチですよね。今は攻撃的な部分を強めていますけど、でも攻撃性のあるものだけを届けたいかって言われたら決してそうではないですし。かと言って、例えば「冷凍室の凝固点な繋ぐ体温」のような世界観のあるものを届けるとしても、1曲目から最後までそれが伝え方のベストではないですよね。
────昨年から今年1月にかけて本領発揮できるワンマンの場が多かっただけに、限られた時間でのジレンマも感じます。
廣瀬:対バンではお客さんにわかりやすいものを提示した方が良いなって。自分たちのやりたいこととは別で。そういうライヴでの起爆力を欲して生まれたのが「Firebomb」で。
────ストレートかつダイナミックなビートとコール&レスポンスの応酬というシンプルさがnuriéとしてはむしろ異色な1曲ですよね。
廣瀬:ライヴの空気を変える役割をしてくれる曲ですね。今、まさに制作中のアルバムにも収録されるんですけど、アルバム全体の特徴でいうと別にそういう曲だけでもないですし、nuriéの全てでもない。深いところへたどり着いてもらうための一つの武器ですね。僕らが始動した一番最初は大角が作ってきた「モノローグ」って曲なんですけど、あの曲ってヴィジュアル系っぽさはなくて普通にJ-POPだと思うんです。シティポップ的でもあって、すごく良い曲なんですけど、この一本鎗でヴィジュアル系シーンを戦っていくのはどうなんだろうってことを僕は当時思っていて。「モノローグ」が埋もれてしまわないために、ヴィジュアル系が好きなお客さんにちゃんと響きやすい激しい曲も同時に作ったんです。対極に存在する楽曲がそれぞれを引き立たせあう。だから、今は初期の感覚に近づいているのかも知れない。様々な楽曲の中間にnuriéっていうバンドが立っているイメージ。